ツキ、アイ
デートって何書けばいいかわからん
おじさんは彼女いない歴=年齢なので
ということでデート当日である。
目が覚め時間を確認すると、どうやらいつもより早く目覚めたらしい、時刻は5時半を指していた。
「また要らん気遣いを…」
と脳内でピースしてそうな千歩を思い浮かべながら色々と身嗜みを整える。
とりあえずボサボサの髪の毛を軽く梳かしつつ今日の予定を改めて確認する。
まず9時前に駅前に集合して、その後電車に乗り3駅進んだところにある少し大きめのショッピングモールで買い物する、そんな感じだ。
飯とかもそのモールで食べる予定、で間違いないな。
「よし、まずは朝飯でも食うか、その後いい感じに家事をしたらいい時間になるだろ」
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家事を終え、出掛ける準備に入る。
服装は昨日アイツらと決めたシンプルだがちゃんとオシャレに見える感じでシワとかないのを確認。
メガネを外し、少し怖いがコンタクトを装着、髪の毛は軽くワックスで整え、さて準備完了。
現在時刻、7時前、約束の予定まで2時間ほどあるが、家でソワソワしてても焦れったいだけなのでもう出ることにした。
2時間程度待つ時間にすらならないだろう、デートを楽しみにしてるということだし、何より「女の子を待たせる」なんてことは男として失格な気さえする。
亜美さんも時間には余裕持ちそうなタイプだし早めに待っておけば長い時間一緒にいられるかもしれないしな。
と考えて、ふとコレが「好きになる」ってことなのかな、と感じた。
7時をすぎた辺りで駅前に辿り着く。日曜日の朝の駅前は自分の想像してるより人が多かった。
駅前のベンチに腰掛け、彼女を待つことにした。
さてこういった時間はやはり千歩に関する思考を行うに限る。
まず前提として俺の思考に関する問題で、
「なぜ付き合い始めたら夢の中でも付き合おうとしてきたのか」が目下の疑問点である。
そりゃもちろんその前に付き合うという選択肢はあったはずで、問題は告白されたタイミングで夢の中で同じことが起こるのか、というかそもそも千歩とはどういう存在なのか、と言った所で…
現在の仮説としては「精神的に亜美さんと付き合えたことに自信が持ててないから脳内で練習しようとしていたが、それに相反するような感情に浮気は良くない」と思っている、が1番信頼性がある思考だろう……。
と考えている時、不意に静かになっていることに気付く、人自体はあんまり少なくなってるようには感じないが、なにかあったのだろうか、と顔を上げると皆1人の少女に目を奪われているようだった。そしてその人物が亜美さんだと気付いたのですぐに立ち上がる。
「亜美さん、おはよう」
「あ、もう来てたんだ…颯太…く、ん?」
こちらを振り返って少し不思議そうな顔になる。メガネ無いから仕方ないか。
「普段は眼鏡なんだけどね、今日はちょっと気合い入れてきたんだ」
「え、えっと、うん、すごく似合ってる…出来ることなら毎日コンタクトにしてて欲しいなって思うくらいには」
「そう?それは嬉しい、亜美さんも服装すごく似合ってるよ」
「あ、ありがとう……」
「じゃ、行こっか」
「はい…」
あくまで、陰でないように、横に立つ時に相応になれるようにいつもより少しだけ積極的にやってみる。そういえば昔誰かに「天然でそれするのはタチが悪い」とか言われたな…佳代さんかな多分。
なんか周りの視線がすごく気になる…まぁ美少女の横に普通の男が入れば嫉妬の目線の一つや二つ貰うだろうとは思っていたが、自分の想定より多い気がする。嫉妬、憤怒、不満そうな目線を感じる。てか同じ学校の奴じゃねーか、まぁいい。
俺は亜美さんと奇異の視線から逃げるように電車へと乗り込んだ。
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電車内では他愛もないことを話した。昨日の2人のことや好きな食べ物だとか、本当に日常的な会話で、少し穏やかな気持ちになった。
そして今回の目的地、そこそこデカいショッピングモールへ辿り着く。
「亜美さん、まず何から見て回る?」
「んー、どうしよう、気になった店に入ってく感じでいいんじゃないかな」
「それもそっか、じゃ適当にぶらつこう」
と店を眺めながら2人で歩く。
目が止まったのは雑貨屋だった。
「そういえば、シャー芯切らしてるんだった、折角だし見に行ってもいい?」
「いいよ」
亜美さんからの許可を貰い2人で雑貨屋に入る。
いつもは百均などで買ってるのでこういった店は久しぶりだった。
「色んなのがあるんだね」
「そうだねー、あっ、これとか可愛いかも」
「メモ帳、確かに可愛いね」
「紙ってなんか好きなんだよね」
「よく本読んでるよね、オススメとかあったりする?」
「あんまりオススメ出来ないかなぁ」
「まさか、えっちなやつ!?」
「いやいや、普通の人からしたら面白みのない純文学だよ、気になるなら、オススメを貸すけど」
「え!見たいかも」
「そういえば颯太くんお金って大丈夫なの?」
「バイトしてるから、ある程度は余裕だね」
「なんのバイト?」
「んー、ちょっと秘密厳守って言われてるから秘密かな」
「えー、気になるなぁ」
「なんでしょうねぇ、コンビニとかじゃないのは教えとく」
「あ、可愛い…」
「ぬいぐるみ?いいよね、ウチに欲しいかもなぁ…」
「颯太くんはぬいぐるみ好きなの?」
「え…まぁ好き、かな?」
とか他愛のない話をしつつ雑貨屋を回り、目当てのものを買って雑貨屋を出た。
「色々あったね、新鮮だったかも」
「私も、あんまりちゃんと見たこと無かったなぁって思った」
「そうだね」
と感想を話しながら2人並んでまた歩く。
恋人っぽい…俺の中の恋人像は彰人と佳代なのだが、その2人は腕組んだり手を繋いだりして歩いてるらしいが、俺はまだ恥ずかしさがあったからその提案は出来ないでいる。
勇気を…と思うのだが彼女の方を見るとすぐ恥ずかしくなって目を逸らしてしまう。思ってたより自分はヘタレだったんだなと少しの自己嫌悪があった。
「ねぇ颯太くん」
「どうしたの?亜美さん」
「ちょっと、服、見てもいい?」
「もちろん」
次の行き先は決まった。
2人でなんかキラキラした服屋に入る。女物が多い、男性は肩身の狭い思いをしそうだなと他人事に考える。
「新しい服が欲しいの?」
「それもそうだけど…颯太くんの好みとか知りたいかなぁ、って」
え、可愛い。どうしよう健気すぎてさっきまでの自己嫌悪が悪化しそう。というか反応に困る…嬉しいんだけども
「え、っと…ありがとう?」
「彼女ですから」
「じゃあ、彼氏として俺も頑張ります」
「頑張ってください」
と言われたものの、俺には服なんてよく分からない、この組み合わせすらあの二人の組んだものであり、センスという点では皆無と言って差し支えない、がしかし、期待されてるので自身の持てるセンスを全て使うことにする。
「なんか女性モノはほんとに種類が多いね」
「女の子はオシャレする生き物だからねー」
「男性は日々感謝と尊敬をするばかりです」
「一応なんだけどどんな服が好みとかってある?」
「あんまり気にしてないかなぁ、似合ってれば何でも好きかも」
「私はかわいい系結構好きなんだよね」
「ぬいぐるみとか見てたもんね、かわいい系、すごく似合いそう」
ということで亜美さんに似合いそうな服を探す。恋愛系に無頓着だったとはいえ、服装にだらしない人間でもなく、なおかつどこかのいちゃっプルのおかげで今の女子の服装の傾向などはある程度把握はしていた。
「アイツらの惚気がまさかここでも役立つとは」
「彰人くんたちの惚気?」
「そうそう、アイツ惚気ける時にこんな服で来てくれたんだよ、とか見せてくれるから…あと聞いてもいないのに最近の服装の流行とか教えてくれるから…、こんなのとかどう?」
ソフトなベージュ色の服を取る。この形の名前とか知らないけどちょっとフワっとしてるのは雰囲気にあってると思った。
「なんか落ち着いた雰囲気がいいね」
「こういう落ち着いた色には下は少し白めのが映えるかな」
と同じくソフトな色合いの深緑に近い色の長い丈のスカートを取る。
「そんな感じのがいいの?」
「んー…いやなんか古めな雰囲気になるかな?とりあえずで取ってみただけだからもうちょい悩ませて…」
出来ればなんかこうイメージの中で似合うヤツを…と考えるが、いまいちしっくりくる見た目の服はなかった。
その後、亜美さんに相談しながらようやく一着、服を2人で選ぶことが出来た、が、何故か終始亜美さんが嬉しそうにしてたのが不思議だった。割と情けないところを見せた気がするのだが…まぁ嬉しそうなのでいいか、と割り切る。
ふと時間を確認すると12時はとうに過ぎており、もう数分で1時になるところだった。
ということで飯にしようと両者意見が合致した。
「ごめんね、時間取らせちゃって」
「気にしないよ、別に。頼んだのはこっちなんだから、むしろ嫌がられるかと思ってた」
「嫌がられる…?あーなんか男子は女子の服選びが長いから幻滅するとか何とか言うやつ?正直訳分からん」
というかむしろ自分の好きな見た目に寄らせることも不可能では無い神イベでは?と思うが、一般男子の思考はわからんな、私が一般じゃない証明もできてしまったな泣けそう。
「まぁ好きな人が自分の好みの服着てくれると思えば喜べるモノだと思うんだけどね」
「みんな服なんて興味無いんじゃない?見た目だけ好きな男とかそんなもんだよ」
少し不機嫌そうな亜美さんを見て、過去に何かあったのかなと邪推しかけたが、俺には関係ないことなので深堀はやめといた。
デートは続きます。
余談ですが私は彼女と服は一緒に選びたい派です。絵を描くのが趣味なので合法的に女性モノの服が見れるのは神イベと言わずして何と言うべきなのでしょうかね