オモワク
4000行かないからってむやみに伸ばすと蛇足感溢れるからちょい妥協、まぁ短くても気にしない気にしない
亜美さんと付き合ってから3日が経ち、彼女が出来てから始めての週末になる。
夢は相変わらずで、千歩は俺の話を今日?昨日も楽しげに聴いていただけだ。
そして俺は夢の彼女に関して…仮説を立てていた。
まず一つ目、彼女は夢の中とはいえ自分とは『別の者』である、いわゆる他人の夢に入ってきた少女である、ということがわかった。
一応夢を調べて見たりしたのだが、どれも見当違いのことを言っているだけのようだ。
異性の知らない人の場合、それが自分の理想像だとかなんとか言うが、あまりピンとこない。それを彼女に話したら
「もしそうならどれほどいいんだろうね」と悲しむような笑いをしていた。
話す場所によっても変わるらしいのだが、どうにも彼女は割と無差別に場所を選んでるらしく、教室、体育館、昨日に至っては何処か分からないが誰かの部屋のようだった。彼女曰く「場所なんて関係ないよ、私が好きなシチュエーションを試してみて君が楽しめるかどうかだから」と返すばかりだ。
さらに調べたが同じ知らない人が出てくる場合は現実逃避の前兆とあったのだが、それを彰人に確認したところ
「お前が現実逃避?現実しか見てないヤツが何に逃げてんだよ、知らない人が出てくる夢を何回も見てるやつは現実逃避してる?お前が現実逃避してんなら全員現実からとっくに逃げてるよ」
と悪口とも取れる言葉を頂いたので多分してない…と思いたい。
まさかコレは本当に胡蝶の見ている夢…とは思わないが、誰かの見ている夢に勝手に入ってるだけか?と本当に思ってしまう。もちろんSFの類になってはしまうのだが、そもそも同じ夢を見続けている時点で相当なSFなのでこの際そこは気にしないことにした。
とまぁこんなに情報を整理しているが、はいご覧の通り本日土曜日、亜美さんとの約束は、昨日、日曜にお出掛けの約束をしただけなので本日はとても暇である。
一応回想として入れておくが
「なぁ、お前週末どうすんの?」
と彰人に聞かれた、俺はいつもの調子で何も無いと言おうとしたが…そういえば付き合ってるなと思い返したので、
「さぁ、なんかする予定だが…一応亜美さんが何か予定があればその予定を入れようかなと」
「お前からは誘わないのか?」
「……一応日曜が暇ならショッピングにでも行かないか?と誘おうか悩んでいたな」
「なら、すぐ誘いなさいよ」
「……」
いや、恥ずかしいじゃん、と思ったが佳代さんの目に冷たいものを感じた気がしたので多分コレは誘った報告をする、もしくは行った報告をしなければ俺の存在が危ないタイプだろうと直感が訴えた。
「じゃ昼の時に誘うか」
「そうね、もうすぐ昼だし、私が連れてきてあげるわ」
「さす佳代」
「任せなさい?私もアンタが付き合ってくれたのは割と嬉しい方なんだから」
「こいつ、実はお前に結構感謝してるからな」
「はぁ!?なんでそんな事言うのよ!?恥ずかしいじゃない!」
「感謝…?何かした記憶ないんだけど」
「お前がいなけりゃこっちは付き合えてないからな、そういうことだ」
恋愛の相談すら受けた記憶が無いのだが…どうやら感謝されるほどのことをしたらしい…全く記憶にない。と伝えると彼らは
「まぁ、お前はそうだろうな」
「アンタはそういうのを何とも思ってないとこがいい所なんだから気にしなくていいわ」
と返された。
アイツらの俺の評価がなんか馬鹿みたいに高い気がするのだが…まぁいいか。
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私、柊亜美は今とても大事な局面に立たされていた。何故か、理由は明白である。
昨日彼からのデートのお誘いに二つ返事でOKしたのはいいのだが、何を着ていくか、とても迷っているのだ。
彼はあまり明るいタイプではないので多分似合ってるとか可愛いとかは恥ずかしくて言えないだろうけど!
でも可愛いと言われたい!恥ずかしさとか全部吹き飛ぶようなめちゃくちゃ可愛い服を着て行って可愛いと言わせたい!
という気持ちがあるのだ!
とそのことを佳代ちゃんに言ったら
「アイツ?あいつは多分平気で言うわよ、アイツの素直なところは私もアイツも知ってるし」
と言ってはいたが
「ま、確かに恥ずかしさで言えないってのはあるかもね、あいつ彼女とか始めてだろうし、結果だけ教えてね」
とも言っていた。
結果…言ったかどうかなのだろうけど何故かその後のことを妄想してしまう。
「っ!!ダメ!そういうのは…もっと段階を踏んでから…」
あわあわと一人で慌てるが、一旦冷静になる。
よし!とりあえず組み合わせ的にいい感じの…とわちゃわちゃし始めた私を、すごい暖かい目で見つめる母親の影にはついぞ気付くことはなかった。
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さて何を着ていくか、俺は自前の服をとりあえず軽く並べてみる。
「一番組み合わせがいいのはあるが、あまり彼女の雰囲気と合わない気がするな、出来れば横に立っても遜色ない感じに…髪でも切るか?いや、時間がないか……とりあえず…コンタクトにするか」
あまり好きでは無いから普段はメガネだが、あいにく自分のメガネがオシャレだと思ったことは無い。
確か昔誰かに「メガネない方がかっこいいよ」と言われた気もするし裸眼に合う服装にしとけば見合うモノにはなるだろう。
まずメガネを外す。
「……んー、何が変わるんだ?目元の装飾がなくなってるだけな気もするが、飾り気のない瞳の方が美しい、みたいなものか?真の美は自然体であること、みたいな?……よく分からん」
今の言ったことを元手にするならあまり派手な装飾は控えてオーソドックスなタイプにした方がいいのだろうな、筋肉もそこまでないから細めが強調されるとそこそこいい線行くかもしれない。
「というか彰人に聞けばいいか」
自分で考えるのはよく分からん、彰人も佳代さんとの予定が無かったらすぐ来るだろう、面白そうとか言って
『おい彰人、服装で相談があるんだが来れるか?』
と送った瞬間既読が付く。ずっと見てたのか?と思うほどだ
『お、いいぞ!任せろ、佳代も連れてく』
『なんだ?お前らデートしてたのか?なら別に後回しにしてくれていいんだが』
『馬鹿め!こんな面白そうなこと、参加しない方が損だ!あと佳代も割と乗り気だ』
なんでだよ……と突っ込みたかったが、デートの約束は2人のいる時にやったわけだし、面倒みのいい佳代だから首は突っ込んでくるか。
「来たぜ!親友!」
「せめてチャイムを鳴らせ、馬鹿が!」
あと来るの早いな!?と階段を上がる音が聞こえる。いや入って来ていいと言ってないんだが……まぁあいつの事か気にしたらダメだな。
「よし!今ある服は!よし全部出てるな!」
「はい、おじゃましてるよ、ごめんねバカが突っ走って」
「いつも通りだ」
「ま、そうだね」
ということでまず軽くどういう風にしたいかの説明をする。
「ふむ、シンプルな感じか、まぁお前の服なら問題は無い」
「そういえば颯太のメガネ無し見たことないかも」
「佳代、コイツやばいぞマジ、よくこんな原石いたなって驚くレベルだ」
「んな馬鹿な…彼女に嘘をつくにはもう少しマシなものをつきなさい」
「ん、とりあえず外した方がいいか、はい」
俺がメガネを外す、度数があまり高くないので外してもそこまで世界は変わらなかったが、佳代さんの顔はすごく変わった。
「は?」
「いや俺は言ったぞ?こんな原石滅多に無いって」
「原石どころの話で済まないんだけど!?何コレ!?え?別人過ぎない?むしろずっとメガネ外し…いややっぱダメ、コレは結構危ない…」
「佳代?それは多分亜美ちゃんがするべき行動だから自重しな?」
「自重…出来るわけ、ないでしょ!?なんでこんな原石がいるのを黙ってたのよ!?」
「えっと…佳代さん?」
そんなにヤバいの?というか半分キャラ変わってない?
「いや、すまんな颯太、実は佳代、重度のギャップ萌えなんだ、お前の普段からのギャップ差がコイツの萌えを刺激したみたいだ、だから……あとは、頑張ってくれ」
「え?」
「任せなさい…今から私が貴方を完璧な美男子に生まれ変わらせるから、安心して、すぐに終わるわ」
なんか……怖、ちょっと?
その後、佳代にされるがままに色々着させられ、明日の服は決まったが、とんでもない疲労感に襲われた。
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とある帰り道の二人の会話
「なぁ、佳代」
「どうしたの?」
「俺もだが、お前も大概だぞ」
「なんの話?」
「彼氏とのデートよりアイツらの恋路を心配するのは珍しいだろ、大抵どんな要件も断るくせに」
「あら?それを貴方が言うの?彼女とのデート中は大抵スマホをミュートにしてるくせに今日だけやたらスマホ見てた貴方が?スマホに嫉妬しようかと思ったわ」
「あいつらには嫉妬しないところ、お前らしくて俺は好きだぞ」
「私も、貴方のそういうところは、好きよ」
さらに二人の会話
「明日、どうする?」
「何?どうするって?」
「俺的には今日のデートも満足だが、途中から俺そっちのけだったのは流石に嫉妬する」
「……そうね、じゃ明日もデートしましょうか、どうせあの二人はちゃんとやるでしょ」
「やらなかったら俺らの惚気で嫉妬させてやるか」
「貴方、颯太と会話する口実に私との惚気は嬉しいけどたまに他の子にからかい混じりに言われるから程々にしなさいよ?」
「でも、辞めろって言わないから」
「そりゃ……颯太には知られてもいい、というか私たちがどれほど彼のおかげでこんなになってるか自慢して欲しいからね」
「じゃ、俺も頑張って惚気けるわ」
「声は小さめが嬉しいわ」
「善処するよ」