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フタリのカノジョ  作者: TKsunder
1/18

現実と夢

初めまして

初投稿です。終わり方は決めてます、ゆっくり更新するので飽きずに見てもらえると幸いです。

毎話4~5000字で書いて行く予定です

「ねぇ、ワタシを選んで欲しいの…貴方のことが…私はまだ…好き、だから……」


あぁ、またこの夢だ。見たことの無い少女がこの視点からだと影になって見えない誰かに告白している。そしてその後もきっと、いつもと同じだ。


「なんで…やっぱりあの子のことが…」


そして少女が走り去っていく、いつもの夢だ…そして俺は目を覚ま…


「なんで…俺に…言うんだよ…俺は…」


初めて、男の声を…待てこの声は何処かで……


「っ!!」


目覚めてしまった…夢に変化が訪れたことに驚きを隠せない。

頭の近くにある時計を見るといつも通りの時間だった。


「今は考えても無駄だ、とりあえず朝の準備をしないと…」


もちろん、今の俺はこの夢が今後何を意味するのかなど知る由もなかった。


ーーーーーーーーーーーー


俺は俗に言う一人暮らしの学生である。がそこら辺の一人暮らしとは訳が違ったりする。親がとても仲が良く、母親が父親の転勤に着いて行った為に普通の一軒家(ローン支払い済)に住んでいるタイプの勝ち組学生だが、もちろん家事炊事は行っている為、割と朝は早くないといけないのだ。


「こんなもんか」


今日の弁当を作り終え一息つきながら1杯のコーヒーを飲む。やはり朝はコーヒーに限る、この1杯を飲まなければ朝は始まらないと言っても過言では無い…。


「よし、今日も一日、頑張るか」


ーーーーーーーーーーーー


おはようが飛び交う正門を誰にも気付かれず進み、誰かに話しかけられることも無く上履きを履き替え、誰にも気付かれず席に着く、よし、任務完了。あとはホームルームまで嘘寝を決め込ん…


「よぉ!颯太」


決め込むことが出来なかった、悪友に見つかってしまったようだ…。


「どうした彰人、なんか用か?」

「もちろんだ、ちょーっとモノは相談なんだが…5限の数学のプリント、見せてくんね?」

「なんだ、なんの用も無いのか、なら話しかけないでくれ」

「冗談だって!ちゃんとやってきた、やってきたから!」


と手元には確かにちゃんと終わってるプリントがあった。


「じゃ、なんだ、話しかけにきただけか」

「そ、まぁ特に用があるわけじゃないけど、ちょいと軽い雑談だと思ってこっちの話を聞いてくれや」

「なんだ惚気自慢か」


コイツ、佐々木彰人には恋人がいる。彼女自慢したくてしょうがないのだろう、まだ3ヶ月とかそこら辺だしな。


「でだな!そん時アイツがさりげなく見てたアクセがあった訳!だからアイツがトイレで席外した隙にバレないように買って、帰り、分かれる時に渡してあげたんだよ、そしたらアイツめっちゃ嬉しそうで!いやー、あん時は俺の彼女可愛すぎか?とか思っちまって…」


思ってたより青春濃度が高い話をどうしてコイツはこうもずっと語れるのだろう、嫌悪感はないのだが、愛情といったものがよく分からない俺からしたら中々に勉強になるもので、


「で、颯太、お前は作んねーの?」

「作るも何も誰かを好きになったことがなくてな」

「…とは言うが、俺の惚気を面白そうに聞いてくれんのはお前だけなんだよ…だから俺からしたらお前も恋愛に興味あると思うんだが」

「あっても自分でしたいかどうかは別なんだよ、俺は恋愛に興味はあれど自分でやりたいと思わないんだ、ゲーム実況者は好きだがなる気は無い、みたいなことだよ」

「なるほどなぁ」


その後は彼の惚気を聞き…HRが始まる前に彼は自教室に戻る。そしたら後は何が起こる訳もなくいつも通りの誰にも関わらない一日の始まり…のはずだったのだが、事件は昼休みに起きた


「アンタだよね、榎宮颯太ってのは」

「…?はい、そうですね。何かありました?」

「コレ、渡してくれって頼まれたから、じゃ私はコレで」

「え?あ、はい」


と見知らぬ少女に渡されたのは一通の手紙だった。果たし状…なわけはないだろうが、今どきラブレターなんてモノでもないだろう、と軽い気持ちで封を開く。


「お話があるので、放課後、屋上に来てください」


なんとも古典的な、果たし状にしてはあまりにも丸文字だが、これだけでは詳しい内容なんて分かりはしない。きっと何らかのドッキリなのだろうが、生憎『頼まれたら何でも聞く』私からしたらドッキリでも行かねばならない。どうせ一人暮らし、遅れて困るのは己のみだしな。


と、そんなことを考えていた。


ーーーーーーーーーーーー


放課後、屋上に向かう、帰ろうとする者、部活に行く者、人それぞれだが皆自分の目指す方向とは反対の方向へ向かう、人の流れに逆らうのは少し不思議な感覚を覚えた。


「屋上…あ、開いてる」


扉を開け屋上に足を踏み入れる、まだ誰も来ていないようだった。


「まぁ冷やかしかもしれないし、誰も来なさそうならすぐ帰ればいいか…」


とりあえず10数分待てば充分だろう。うん。

と思ったのも杞憂だったようで、すぐに屋上の扉が開く。


「あ、こんにちは」

「ごめん…待った?」

「あ、あなたが俺を呼んだんです?」

「そう、あ、自己紹介がまだだったね、私は橘亜美っていうの」

「佐久間颯太です」

「大丈夫知ってるよ、私が呼んだんだし」


すると亜美さんは軽く笑って、すぐ静かになった。


「で、要件…なんだけどさ」

「はい」

「私と恋人になってくれないかな?」

「…それは、どうして俺、なんですかね?」


可能性のひとつとしては想像してたがまさか自分が告白されるなんて思ってもいなかったが、どうにか言葉を絞り出す。

少なくとも初対面…あちらはこっちを知っているようだが、こっちは全く記憶になかった。


「理由…かぁ、うーんなんて言うべきかなぁ」


と亜美さんは少し悩んだ末に、


「私も誰かと彼氏彼女の関係になりたいなーって思ってたんだけど、ほら人気な人たちとそういう関係になったら女の子の嫉妬が怖いなーって言うのと…君は大人びてるし恋人としてはかなり良い方なのかなーとか思ったり?」


すっごく怪しい…やはりドッキリか。まぁ『頼まれたなら何でも聞く』が…聞くだけで『断らない』ことは無いが…


「なるほど…?」

「いや、別に妥協して君、とかは無いから!安心して!」


それは安心…いやたぶん頑張って何かを隠してるんだろうしそれを探るのは野暮というか失礼だろうし、いいか。


「わかりました、俺でよければ」

「!それって恋人になってくれるってこと!?」

「は、はい、俺でよければ喜んでお受けします」


と言うとすごく嬉しそうな顔をした。


「良かったぁ…振られちゃったらどうしようかなって…」


うぅむ、反応に困る。


「じゃ帰ろ!私も今日は部活ないから」

「あ、はい」


帰り道は偶然か、同じ方向だった、が、会話は特になかった。というか彼女いない歴=年齢だった私が女の子と話せる話題などあるわけがなかった。

あっちはどんな感じかなとちらりと横を見ると、こちらを見ていた彼女と目があった。


「…」

「……」


気まずい…よし、とりあえずなんか話題を考えるか。


「あ、そういえば亜美さんは普段料理とかします?」

「ふぇ、あ、料理?料理はね…あんまり、かな……お母さんが料理好きであんまり手伝わせて貰えなくて…颯太くんは、どうなの?」

「俺一人暮らしなので普段結構料理するんですよ」

「へー、美味しいの?」

「……どうなん、ですかね?人に食べさせたことは無いんですけど」


と亜美さんの方を向くとすっごいキラキラした目でこちらを見ていた。

うん?食べたいと言うことかな?


「よければ弁当作りましょうか?」

「え!いいの?」

「まぁ…俺も自分の料理がどんなレベルかちょっと気になるんで、それに…」

「それに?」

「出来れば…初めては友達とかじゃなくて彼女とかに食べて貰えるなら嬉しいかなって…」


言ってて思ったが恥ずかしいな!ほんとに!よく彰人は惚気自慢できるな、ほんとに!恥ずかしくて穴があったら入りたい!


「えっ、あ、ありがとう…」

「かわいい…」

「えっ?」

「いや、何も!えっと…いつ作ればいいかな?」

「あ…そうだね、えっと…そうだ、メッセ、交換しよ?お母さんに聞いてみないとわかんないし、あと…恋人に、な、なったんだし!」

「あ、はい、そう、そうですね…」


ということでメッセの交換をして、それからしばらく歩くと


「あ、じゃあ私こっちだから…」

「あ、はい」

「じゃまた明日」

「はい…また明日」


そしてその後彼女の背中を軽く見送ってから俺も反対方向の俺の家の方へ向かう。


…俺は、彰人に滅多にこっちからメッセなどは送らないが、正直今にも叫びたいのを我慢して、彼に一言メッセを送る。


『彰人、恋愛って凄いな』

『え?どうした颯太、変なものでも食ったか?』

『なんでそうなる、いや普通に青春っていいものなんだなって』

『…小説か?わからんが、ならお前も恋人作ってみろよ!いいもんだぞ!恋人は』


恋人が出来たから言ってんだが、まぁ根掘り葉掘り聞かれるのも面倒だし、その後軽く返信し、帰路についた。



普通の物語ならばきっとここで序章が終わるのだろう、物語としては1話目として充分な内容だが、俺の物語は、ここまでが前座だ、序章は今から始まる。


「え?ほんとに!付き合ってくれるの!?」


なんだコレは、誰だお前は…いやココは、夢?夢だ、いつも夢で聞いていた声だ。

目の前の少女はすごく嬉しそうにしている。


「私、あなたと付き合えて凄く嬉しいの!だっていっつもあの子のことばっかりだったんだもん」


なんの話…と口を開けようとしたが、声を出すことは出来なかった。

というかそもそも君は誰なんだ…。


「…え?私の名前、私は千歩だよ、よろしくね颯太くん」


待て、いや夢とはいえそれはダメだ、俺は今日亜美さんって子と付き合ったんだから、そういうのは夢でも不純だ。


「もう、颯太くんは真面目だね、でもそもそも現実と夢は交わることは無いんだから別に問題ないでしょ?」


だとしてもダメだ、不誠実なことはしたくない。


「そっかぁ…既成事実作っちゃえば早いと思ったけど…告白して即振られるとは…ま、ならしょうがない!」


何がだ…というか嫌な予感がしてきたな……。


「じゃ、君が私を選ぶまで私は夢の中で色んなことをさせてもらおうかな?」


いつ終わるんだ?


「そうだなぁ…、君があの子を選ばずに私を選ぶまで…かな?じゃ、よろしくね?」


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