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盗賊討伐 3


 三十人はいるな、と思っていたが数え直せば三十二人。

 魔力を持つ者はいないらしい。

 魔力がない人間は魔物以下。

 そんなに時間はかからないな、と手近な者から斬り捨てる。


「は、え……!?」


 さすがに一撃程度では、十人ほど討ち漏らすな。

 数が多く、真っ二つにして即死させたかったが中途半端になってしまった者が数人。

 呻き声が聞こえるので、即死ではなく半殺しにしてしまった。


「な、なんだお前……女なのに……」

「事前に騎士であると名乗っている。私はマティアス公爵家の――ジェラール・マティアス様の騎士。女の騎士はいないとでも思っていたのか? それは残念だったな」


 村の方に逃げる者と、森の方に逃げる者、草原の方に逃げる者と分れる。

 草原側に逃げたのが三人、森の方に逃げる者が四人なので草原側に回り込んで一振りで三人を真っ二つにしてから、森の方に走る者へ追いついて回り込んだ。

 身体強化を使った私に、身体強化魔法が使えない盗賊は目を剥いてい逃げ切るためにばらばらに逃げたのに、まさか追いつかれるなんて思わなかった、という顔。

 騎士のことを舐めすぎではなかろうか。

 まあ、王都の側まで来る者たちだ。

 トロール兄弟もいたのだから、王都の近くまで来ても稼げるとでも思い上がったのだろうな。

 地方を荒し回っていればいづれ騎士団が派遣されて討伐されていただろうけれど、私一人で半壊しているのだからやはり”騎士”を舐めていたんだろう。


「嘘だろ、こんな……」

「女の騎士でこんなに強いなんて、聞いてないぞ!」

「待ってくれ、助け……!!」

「次の人生は騎士の警告には従うようにするのだな」

「ぎゃあああ!!」


 四人の始末が終わり、村の方に逃げた三人に向かって走り出す。

 自警団兵たちが弓矢で村の方に走る盗賊たちを足止めしてくれている。

 加速を繰り返し、村に入る直前で回転しながら三人の盗賊を轢きながら斬り殺した。

 ちょっとばらばらにしすぎてしまったなぁ。


「やりすぎてしまった」

「そうですが、人数的に考えて手加減ができる状態ではなかったですし、今までのフォリシア様なら自警団兵まで吹き飛ばしていたと思います。成長されましたね」

「ルビ……ありがとう。あとの処理を頼む」

「かしこまりました」


 駆け寄ってきたルビに死体の処理を任せる。

 彼女の転送魔法で王城の罪人の死体処理場に送ってもらう。

 そこでサタンクラスの上位の者が盗賊の犯罪歴を確認して、相応の遺体罰が遺体に下される。

 遺体に罰が下ると自然魔力に還元された遺体と魂は瘴気や雑念に侵され、次の人生は魔物一択になるのだ。


「ジェラール様!」

「フォリシア、お怪我はありませんか!?」

「はい――」


 あ、血の匂い。

 ジェラール様の方に駆け寄るが、自分が三十以上の命を奪ったばかりなので手前で立ち止まった。

 けれどジェラール様は気にせずに駆け寄ってきて私の手を握って来てくださった。

 合法、合法だよな!?

 いや、だって、ジェラール様から、私の手、お、おうううう!?


「ジェラール様……!? あ、あの」

「僕の魔力で、魔力を補充してください。盗賊のことは他にも仲間がいるかもしれないので、僕の方で調べてみますので」

「……はい、では、お言葉に甘えて」


 ジェラール様の魔力をいただく。

 体から溢れる魔力は確かに余分なんだろうけれど、酔うほどのものではない。

 多分、魔石作りで普段より減らせているのだろう。

 それにジェラール様から溢れる魔力は……なんて心地のいい魔力。

 しかし、私の手を握っているジェラール様の手は震えている。

 顔色も悪いので体調が悪いのかと思ったけれど……。


「ありがとうございます。魔力がだいぶ戻りました」

「っ……僕……、本当に、弱虫で……」


 ああ、やっぱり。

 戦いの場を見るのは、優しいジェラール様にはつらいのだろう。

 見えるところにいてもらったのが失敗だったな。


「役に立たなくて、本当に、僕……!」

「そんなことはないです! ジェラール様が村にいてくださったおかげで、私は冷静に戦えました。ジェラール様の名前に恥じぬように戦えたんです」

「僕の名前……?」

「はい。騎士は大義がなければ力を行使することができません。大義がなければそれは賊と変わりません。ジェラール様の名前が、村を守る大義となったのです。ここにいてくださったから、私も全力で戦えたのです」


 ありがとうございます、とお礼を言うと、ようやくジェラール様が安堵したような表情になった。

 可愛い。非常に可愛い。もう可愛さの感動で唇を噛んでしまう。


「なにはともあれ、想定外の戦闘でしたしもう帰りましょう」


 マルセルがジェラール様と私を引き離す。

 なんだゴルァ、と思ったが「フォリシア嬢、魔物と盗賊の雑念がまとわりついているので、これ以上は」と言われてハッとした。

 そうだった。

 盗賊たちの”恐怖”が雑念になって私にまとわりついてしまっているのだろう。

 せっかく回復しているジェラール様に、また雑念が取り込まれたら大変だよな。

 なにより、盗賊たちの雑念がジェラール様に入るなんて破廉恥すぎるし許せない!


「マルセルは私にまとわりついている雑念を吸ってくれたりしないのか?」

「気分的に今は無理」


 どういう意味だ。


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