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父の最期の願いを叶えるために

作者: 大喜

 俺の父親は、今年の1月末に病気で死んだ。2年間の闘病の末、47歳で人生を終えた。闘病中はコロナの影響もあって大体の父の願いは叶わなかった。

 家族や友達と会えず、病院の個室に1人で辛い痛みを耐えていた。終わりの見えない入院生活、薬の副作用で抜けていく髪の毛、まずい病院食、これを約2年、耐えた。

 俺は父を尊敬している。こんな生活、想像するだけで辛い。いや、実際はこんなものではなかったと思う。闘病中の父だけでなく、全てだ。家族のために働き、休日は大体どこかに連れてってくれてた。当たり前ではない。入院生活の中でも家族を気にかけてくれてた。

 父のスマホに「やりたいこと」という名目のメモがあった。旅行や食べたいもの、見たい映画などが書いてあった。それらは全て叶わなかった。父が書き残した遺書には、いろんな人に対して想いを遺していた。俺、弟、父の妻、父の母、父の妹と弟。様々なことが書いてあったが、父の母、妹、弟宛に「どうか妻を家族として認めてもらいたい」とあった。俺はこれが最期の願いだと思っている。

 俺の母は、その祖母らと少し馬が合わないところがある。父はなんとか妻を認めて欲しかったのだと思う。そして、父が死んで数ヶ月経った今、墓のことですごく揉めている。割愛して言うと、祖母らは祖母の住んでいる東京と俺らが住んでいる埼玉で分骨したいと言っている。しかし、俺の母は分骨はしたくないと思っている。ほぼ毎日これについて電話で揉めている様子だ。そして今、祖母に「もう関わるな」と告げられたらしい。俺の母は、俺に謝った。「ごめんなさい」と。

 俺は、正直言ってすごく悲しい。俺と祖母たちの関係は良好で、従兄弟とも仲が良かった。俺は本当に詳細な部分はあまり分からない。だが、俺には父の最期の願いを叶えてやる使命があると思っている。これはやらなければいけなくて、やれるのは俺しかいない。俺の使命は、父の最期の願いを叶えることだ。


 スマホで祖母にメールを送る。このメールに俺の願いを乗せる。

 「母から話は聞いた。縁を切るらしいな。何も分かっていない俺から言われるのは癪だとは思うけど、正直に言う。お互いが納得する形で縁を切らずにこの話を終わらせてほしい。縁を切らないで欲しいというのは俺だけの意見ではない。あなたの息子の想いでもある。そこだけは叶えてあげて欲しい。そして、この話については母の意見に融通を聞かせてあげて欲しい。

 父のために1番頑張っていたのは母だ。当たり前だと言うかもしれない。その通り。当たり前だ。子供達の世話に家のこと、仕事もして、ほぼ毎日、病院に着替えなどを持っていく。でもその当たり前をしっかりこなした母に「ありがとう」と心から言ってあげて欲しい。そして、母に対して無礼があったと思うなら謝れ。頼みます。」


 これで父の願いが叶うかは分からない。だが、これだけはなんとしてでも俺がやる。父の最期の願いをかなえるために。


 

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