黒猫2
「どこっすかああああああ!! んにゃあああああああ!!」
黒猫のクロは王都のバステト教会の上で大泣きしながら叫んでいた
この王都のどこかには必ずいるはずなのに、一向に見つからない白い救世猫
疲れ果てたクロはひとしきり泣いた後ふかくふかーくため息をついた
彼女の探知能力は決して高いとは言えず、また、聞き込みも雑なためなかなか見つからない
様々な精霊スキルを駆使してはいるが、それでも見つけれないのは、単に彼女が方向音痴だからである
転移でなら目的の場所に行けるが、普通に足でとなると、とんでもない方向へ行ってしまうのだ
現にアルト村に住んでいることは掴んでいるが、アルト村に行こうとしたのにいつの間にか数百キロ離れた隣国にいた
仕方なく転移で王都に戻って来ては、それを繰り返して疲れ果てたのだ
「ああ、うちは一生救世猫さんには会えないのかもしれないっす」
クロは教会からふと東門のある方角を見た
目がいい彼女の目に映るのは、これから正に旅立とうとしている勇者と、そして救世猫の姿だった
「い、いいいい、いたっすぅうう!!」
空の彼方まで響きそうな雄たけびを上げながら、クロはまっすぐそこを目指した
さすがに目に見えている場所にはたどり着けるため、文字通りまっすぐ、白猫の上に落ちた
「ぐにゅぁあ!!」
「にゃふん!」
二匹は変な悲鳴を上げながら抱き合うようにして倒れる
そしてクロの腕に当たる柔らかい感触と、白猫の顔に当たるふさふさの感触
「んにゃ? この柔らかさは、なんて踏み心地がいいんすか!ふみふみふみふみ」
「フニャアアア!! へへへへへへ変態ぃいいいい!!」
クロがふみふみしたのは、なんと白猫の胸だった
雌である白猫の感覚は人間と同じ
変態が突如落ちてきたと思った白猫は、その能力で黒猫の頬を思いっきりひっぱたいた
バチュンという音が響いて、黒猫クロは東門の壁に叩きつけられて気を失う
「ふにぃいい」
ずるりと壁からずり落ちたクロは目を回して気絶している
「な、なに?猫? どういうこと?」
驚く白猫は、倒れた黒猫に近づいてその正体を探ろうとする
すると黒猫の目がパチリと開かれた
「し、刺激的っす。快感っす。最高っす!!」
クロの目に映るは可憐で美しい白猫
クロは雌でありながら、同じく雌である白猫に一目ぼれしてしまったのだった