猫の力36
二日ほど前のこと
ちび猫ちゃんツーのからの情報
街にある娯楽施設、闘技場にてヴァレスクさんとアリュエナがお互い相対するように立っていた
アリュエナはしっかりとヴァレスクを見据えていたが、ヴァレスクの方は目をそらす
「自然界では、目をそらした方が負け、ということがあるみたいだな。お前はなぜ目をそらす?」
「あ、えと、う、その」
アリュエナはヴァレスクさんよりも年上だけど、見た目はアリュエナの方が幼く見える
実際エルダーエルフと魔人じゃ寿命が違ってて、ヴァレスクさんは人間でいうところの二十歳くらいなのに対し、アリュエナは十五歳くらい
実年齢はヴァレスクさんが五十歳で、アリュエナが八十五歳とややこしいね
つまりアリュエナの方が年上ってことになる
「ふん、それで戦えるのか? 誰かを守れるのか?」
「・・・。わ、私は! 守るために力を持ってる! お、お前、なんかに、負けない!」
そこから魔法合戦が始まった
「フレアウィップ!」
「アースボウ!」
相殺する魔法
アリュエナが放った炎の魔法と同等の威力の土魔法で消し飛ばしたんだ
「アイシクルメテオ!」
「バーニング!」
降り注ぐ複数の氷の塊を体にまとった炎で溶かしつくすヴァレスクさん
「エーデルブレッド!」
「アポカリプス!」
無数の光の弾を撃ちだすヴァレスクさんに対抗し、闇を展開して光を消し去るアリュエナ
どちらも実力が拮抗しているように見えるけど、決着は驚くほどあっさりついた
「お前それほどの力を持っていながらなぜそんなに自分に自信がない!」
「ち、違うよ。自身がないんじゃなくて、本気を出しちゃうと、壊しちゃうから」
「ハハハハハ! そう言うことか! 私の本気に対しお前は本来の実力を出さず手加減していたというのか! ならば私のこれまでをかけた一撃を! 精霊魔法、エレドナ!」
「アムトマトラ」
どっちも本に乗ってない魔法!?
精霊魔法は知ってるけど、あんなの見たことない
たくさんの星の光が輝いて、それが雨のように降ってくる
それに対し、ヴァレスクさんの使う魔法は空間に空いた穴から何かが染み出てきた
その染み出たモノは振って来た星の光を飲み込み、ゆっくりと、シミのように広がって、アリュエナを飲み込んだ
「な、なんだこれは!? や、やめ、やだ、助けて! 怖い、怖いよぉ!!」
暗闇の中に閉じ込められたのか、シミの中から声がする
「か、解除!」
慌ててヴァレスクさんは魔法を解除した
そして中からは泣きじゃくり、漏らしてしまったアリュエナが出てきた
「ご、ごめん、なさい。や、や、やりすぎ、た」
「うう、ぐすっ」
ヴァレスクさんは彼女を抱き上げると、闘技場を後にした
いいものを見た
あんな魔法めったに見れるもんじゃないよ
そして現在
そこにはすっかりヴァレスクさんに懐いた、変わり果てた可愛い少女が真横にいた