妖精の国7
敵は微動だにせず威風堂々としたたたずまいで立ってる
でもそのオーラは邪悪そのもの
「ここからでも不快な魔力が分かる。ミア、気を付けてね」
「うん、始めから本気で行くよ」
やって来たのは大樹がいくつもそびえ立ってる森の中
その中心辺りに剣士の男が立っている
そいつはこっちにゆっくり振り向いて私を見ると笑った
「なぁ、強いやつってのは支配する権利がある。そうは思わないか?」
「思わない。強さってのは何かを守れるってことよ」
「はいはい、やっぱりどいつもこいつも、同じような能書きばかり。クソみたいな正論正義、吐き気がするよ」
「あなた、仮にも冒険者だったんでしょう? なんでそんなに思想が歪んでるの?」
「あ!? 僕は貴族だ! 平民がひれ伏すのは当たり前だろうが! 道具が、道具が道具が! 僕に指図して! ああイライラする! とまぁ、さっきまでは怒りに満ちていたわけだが・・・。取るに足らないやつらにいちいちイラついていたって仕方ない。ただ支配して、道具は道具らしく使い潰れて死ねばいい。あの方に力を分けていただいたおかげで僕は今、さいっこううううの気分だぁ」
男の頭からねじ曲がった角が生え、二つの目意外にもたくさんの目が顔に咲き乱れる
剣と腕が一体化して、体の大きさが二倍ほどに膨れ上がった
「さぁ僕に飼われろ! お前たちは美しいから特別に奴隷にとどめておいてやる」
「元々邪悪だった心が完全に飲まれてる。さっきの人みたいに抵抗する意思がない。あれはもうだめだよフィオナちゃん」
「・・・。倒そう」
私は精霊の力を全開放して精霊剣と刀を一つにする
フィオナちゃんの方は仙力を聖剣に込めた
「ディアブ・デ・ル・ハレー」
腕と一体化した剣から青色の光が流星のように降り注いでくる
「あぐっ!」
「きゃっ!」
光のような速さで降ってきたため避けきれず、いくつかが直撃した
幸い攻撃力は大したことないけど、あんなのが何度も当たればいずれ動けなくなって、物量でやられちゃう
「エルラヴァーロード!」
すぐに立て直したフィオナちゃんが攻勢に転じる
光の道を走り、相手の胸元に飛び込んで剣による突きを繰り出した
ガキン
あっさりと弾かれる剣
「まだまだ! イルラヴィリデンプション!」
舞うように切り上げて、さらに振り下ろす
「フィオナちゃん下がって! 精霊魔法、アースバインド」
土が盛り上がって、木の根や石、岩、土などでガチガチに固められる魔物
「ぐ、ディブルヘル」
魔物の地面から黒い手が伸びてきてその拘束を解いた
こいつ、精霊魔法を簡単に剝がすなんてどんな力してるのよ!