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妖精の国3

「え、えと、精霊様、今日はよろしくお願いします。改めて名乗らせていただきますね。私はエインセルという妖精のララフェルです」

 声も小鳥のように可愛い

 彼女は緊張しているのか、動きがぎこちない

「ま、まずは私が育てたお花畑をご覧ください!」

 ララフェルの後について女王がいたところから三十分くらい歩いた場所に開けた土地があった

 でもそこには一切花はなくて、かわりに大きな穴が開いていた

「あ、え? なん、で・・・。私一生懸命育てたのに! どうしてこんなことになってるの!?」

 ララフェルは大泣きしながらその穴をのぞき込む

 その穴から何かの気配がした

「ララフェルちゃん危ない!」

 私は慌てて手を伸ばしたけど、彼女は触手のようなものに絡めとられて、穴の奥底へと消えてしまった

「大変だ! すぐ助けに行かなきゃ。フィオナちゃんはこの事を女王に伝えて!」

「う、うん!」

 私は穴に飛び込んだ

 まさか来たばかりの国でいきなり事件が起こるとは思わなかったけど、早く助けに行かないと

 穴の底に着くと、さらに奥へつながるトンネルを見つけた

 かなり広い穴で、多分さっきの触手の主が掘り進んだんだと思う

 猫形態で走っていると、そこかしこに触手の主のものであろう粘液がまかれていた

「うわ、気持ち悪い」

 白濁とした粘液を避けつつ、数分走ったところ、何か黒い塊が見えて来た

 それはうねうねとした触手を動かしている

「でぃひひ、でぃひひひひ、手―に入れた、手―に入れた」

 男の声

 触手の中心辺りにブヨブヨとした肉塊、一応人型になっているけど、肉を人型に固めたような何かだ

 その中心辺りに男の顔があった

 その顔は片目がどろりと溶けている

 そいつの触手の一つには、粘液にまみれてあられもない姿になったララフェルが捕まってる

「その子を離しなさい!」

「でぃひ、ダメだよ。この子は僕のお嫁さんなんだから。あの時、僕に笑いかけてくれたよね。僕に一目ぼれしたんだよね?」

「あなたなんて知らない! 放してよぉ!」

 泣きじゃくるララフェル

「なんでぇえそんなこと言うんだよ! 君は僕のお嫁さんんんなんだから、僕のこと好き好き好きでいてくれなきゃ!」

 男は触手でララフェルの背中を鞭のように叩く

「キャアアア!!」

「やめろこの!」

 私は触手を切り裂いてララフェルを助け出す

「うわあああん、精霊様、怖かったよぉおお!!」

「よしよし、ほら、もういたくないでしょ?」

「う、うん」

 背中の傷を治し、男を見る

「いてぇえええ! このクソ猫があああ!! 僕の大事なお手手をおおお!」

 触手がぎゅるるんと伸びて来る

 それらを躱して男の懐に潜り込み、人間形態に戻ると、その顔面を思いっきりパンチして地面にめり込ませた

「女の子に酷いことするやつ、私許せないのよね。ボコボコにしてやるから覚悟して」

 さらに何度も、何度も、何度も叩きのめし、本当のただの肉塊に変わる男

 男と表現していたけど、こいつは魔物だ

「お、思い出しました、この方、以前この国に観光に来た冒険者です。私や他のエインセルに異常なほど執着を見せて、危険を感じたので二度とこの国の地を踏めない呪いをかけたのですが・・・」

 その呪いは妖精の呪いと言って、もし約束を破れば体に激痛が走るという恐ろしいもの

 それがあるにもかかわらず、この男はこの地に入って来てるってことになる

 それも魔物化して

 人間が魔物化することは本当にごくまれにあるけど・・・

 これは異常

 魔物化した人間は通常人型をはっきりと保ってる

 でもこいつは体中から触手が生え、体もドロッとした何かに変わってた

 これは観光どころじゃない

 ララフェルも襲われて今もまだ震えてるし

 ともかく一度戻らないとね

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