火人の国10
それからしおらしくなったレーさんと共にカムロセツラを倒していく
そこまで強い魔物じゃないみたいだけど、ともかく、ともかく本当に数が多い
一度群れを全滅させたかと思いきや、すぐに増援の群れが来る
しかも全滅させた群れからさらに増加してくるから、もう、本当に! めちゃくちゃに多い!
「魔力にはまだまだ余裕があるけど、この群れいつまで出て来るんだろう?」
「ミア、私もう、魔力が」
「うん、フィオナちゃんは休んでて、はいこれ」
私は魔力回復用のドリンクを取り出してフィオナちゃんに渡す
これは私が作ったジュースで、味にもこだわっててかなり美味しく仕上がってる
ちなみにフィオナちゃんなら日本飲めば魔力は全快するけど、精神や気力が回復するわけじゃないから、しばらく攻撃せずついてきてもらうだけにした
フィオナちゃんはまだまだ子供で成長期
これから魔力もまだまだ伸びて行くからね
今でも同じ年齢の子と比べても数倍はあるのよね
ちなみにメアリーは数十倍です
「あれ? なんだか少なくなってきてるような」
カムロセツラは相変わらず増援が来るんだけど、その数がだんだん減って行ってる
そして最終的に一匹だけが向かって来た
「ファイア!」
下級の火球で簡単に倒せた
もうでてこないみたい
「打ち止めかな?」
「そのようです」
そして四階層への階段の前に、さっきのカムロセツラが成長したかのような女性が立っていた
カンナオウセツという魔物
どうやら精霊の一種らしい
「さっきのカムロセツラとはくらべものにならない力・・・。気を付けて」
「はい、あの力、危険です」
カンナオウセツはこちらを恐ろしい目で睨んでいる
あのカムロセツラは多分この魔物の子供達だったんだ
それを全滅させちゃったから怒ってるんだ
カンナオウセツから何か力の流れを感じる
これは、精霊力
「雪花」
喋った!?
喋ると同時に雪の花が咲き乱れて、そこから氷の刃が降り注ぐ
「あわわ」
「フレイムシールド!」
レーさんのシールドのおかげで刃が溶けて蒸発した
「くっ、雪乱れ」
大きな雪の塊がいくつか落ちて来る
それらがフレイムシールドに当たってシールドが砕ける
「高密度に圧縮された雪の塊? なんて硬さなのよ」
「フレアノート!」
今度はレーさんが攻撃する
「雪禍鬼!」
今度は雪で出来た鬼が現れてレーさんの攻撃をガードする
溶けてないのにも驚いたけど、その鬼は氷のこん棒を振り回して走って来た
「レッドインパクト!」
振り下ろされたこん棒が砕け、その欠片が降ってくる
「フィオナちゃん危ない!」
私は氷の塊を蹴り飛ばした
「ありがとうミア」
「精霊魔法、アルフレア!」
炎の波を出してカンナオウセツを飲み込む
「ぐ、くがああ!!」
どろりと彼女の両腕が溶け落ちた
「く、精霊、なぜ我が子らを!」
「それは襲って来たから」
「だがそれは自然の摂理! 我が領域に入ったのだ、襲われても文句は言えまい」
「待って、ここってダンジョンだよね? 我が領域ってどういうこと? 貴方たちはいったい」
「ここは我らの護る雪の世界。ヒト族との不可侵条約もある! それをお前たちは破った!」
「え? それどういう」
「ヒト族は約束した! だから我らもヒトを襲っていなかっただろう! それを精霊まで呼んで、我を討伐だと!? 話が違うではないか!」
「待って、私達はその話を知らない! それにあなた達はこの世界の精霊じゃないでしょう?」
「この世界?どういうことだ? ここは・・・。ここは、我らの世界では、ない? なぜ? 我はなぜここにいる?」
どうやら周囲の気配で分かったらしい
ここは彼女のいるべき世界じゃないということが
「我は、一体どこへ? 教えてくれ猫の精霊よ。我は、なぜここにいる?」
「ごめんなさい、それは私達もわからないの。でもきっと返すから。それと」
私はアイテムボックスから無数の宝玉を取り出した
これはカムロセツラたちの核
魔力を帯びてたから素材になると思って集めてたけど
「リザレクション」
この魔法は一週間に一度だけ使える魔法
ヒト族だと体が無ければできないけど、この子たちは精霊で、核が残ってれば蘇れる
本来一人に対してしか使えないけど、核と言う魂が残ってる上に、下級精霊だから複数に使えた
「おお、おお、我が子らが、戻って来た」
カンナオウセツの元へフワフワと戻り、嬉しそうにはしゃぐカムロセツラたち
「すまなかった猫の精霊。我がもっと周囲に気を配っていれば」
「いいえ、こちらこそむやみやたらと攻撃してごめんなさい」
取りあえずわだかまりは溶けた
でも、この精霊達は一体どこから? 別世界と繋がってるってこと?
訳は分からないけど、私達は先を目指すことにして、四階層への階段を降りた