蟲人族の国8
その後大捜索が行われて、私も能力を使って探したんだけど、全然見つからなかった
本当に忽然と姿を消したノアちゃん
明らかに人為的で、攫われたとみて間違いない
女王のルタさんはショックで寝込んでしまった
「絶対私が見つけ出しますから!」
なんとしても見つけないと
私は能力で過去の映像を再現してみた
もしかしたら攫われた時の映像に何か映ってるかもしれない
足跡スタンプの強化版
これを現場で発動すると、私とノアちゃんが映った
ノアちゃんはニコニコと嬉しそうにしているなか、一瞬何かの影が見えて、直後にノアちゃんの姿が消えた
そこをスローで再生してみる
「何かいる」
そこに映ったのは真っ黒な、まるで死神のような姿の影で、とてもこの世のものとは思えない
一瞬だったけど姿ははっきりととらえた
ここから追跡できそう
「フィオナちゃん、行こう」
「うん!」
まだまだ小さなノアちゃん
きっと恐怖で震えてるはず
急がないと
相手の姿を追って、私達は走る
普通に再生したら速すぎて追えないから、スローで再生してるけど、それでも速い
なにせ通常速度で私の目で追えないってことは、音速を超えてるってことになる
日もすっかり暮れたけど、休んでる暇はない
このまま走り続けてなんとしても助け出さなきゃ
死神のようななにかは森の奥地へと進んでる
途中に魔物も出たけど構ってる暇はない
魔物は一撃で玉砕して走り続ける
夜も深まって、周りは真っ暗だけど、私は夜目が聞くし、フィオナちゃんには視力強化の魔法をかけてある
そして、ついに死神?の逃げ込んだ山の麓にぽっかりと開いた洞窟にたどり着いた
「フィオナちゃん、これ、多分ダンジョン。しかも神様の加護がない、野良ダンジョンだ」
通常のダンジョンは神様が作ってるので、中で死ぬことはなく排出されるだけ
それとは違って野良ダンジョンは瘴気が溜まった場所に何らかの影響があってできるもので、中から魔物が出てくることもある
そして一番の特徴って言うのが、通常のダンジョンに出る魔物よりもはるかに強いってことだ
中にはネームドや魔王よりも強いと称される魔物もいたらしい
野良ダンジョンは最深部にいる主を倒せば消えるんだけど、果たして、今の私達で倒せるのか?
心配は尽きないけど、なんとしてもノアちゃんを取り戻すために、私達はダンジョンへと入った