新しい旅14
たどり着いたのは一本の大きな木
さっきの火柱から少し進んだところにあったんだけど、屋久杉くらいに大きい
「どう? 世界樹ほどじゃないにしろ、中々な大きさでしょ」
「世界樹見たことないからわかんないけど、大きな木」
フィオナちゃんはこれまで勇者として旅してたからね
観光地に行っても闘いの日々
まあ世界樹のある国には行ってないんだけど
世界樹があるのはエルダーエルフという古代種のエルフが守る森の奥地で、雲まで届くほどに大きな木らしい
この旅の目的地のひとつでもあるんだよね
世界樹なんて前世にはなかったもん
ただこの世界にある世界樹がどんな役割をしてるのか私にはわからない
学園の授業でもやらなかったしね
なにはともあれ、この木はさっきの火柱と同じようにm、なぜかここまで大きくなったんだとか
研究者の見解だと、この国は龍脈という力の流れが強い土地にあるため、そのエネルギーが溢れてこうなってるんだろうという憶測
いろんな研究者や、異世界人たちがこぞって調査には来ているんだけど、未だ不明のこの世界の謎、らしい
「この木はたくさんの鳥たちの巣になってて、僕もよく来るんだ。鳥ってかわいいよね」
「うん!」
確かに木にはたくさんの鳥が止まってる
さえずりはそこまでうるさくない。むしろ心地いい
鳥のさえずりに癒されながら木の下で座っていると、ミタキくんがお弁当を取り出し、配ってくれた
「僕が作ったんだ。うまくできてるといいけど」
ふたを開くと、色とりどりの野菜、おいしそうなから揚げやら、コロッケもあるし、デザートに果物も入ってる
保存魔法をかけてるらしく、魔法が解けない限り出来立てなんだとか
「いただきまーす」
みんなで手を合わせて、食べ始めた
「う・・・」
「あう・・・」
絶句
ただただ言葉を失うくらいにおいしい
「どう?」
「美味しすぎて固まっちゃってた」
「そりゃよかった。僕、料理が好きでね。これでも料亭で働いてるんだ」
「すごい! そこ行ってみたい!」
「僕なんかまだまだだよ。師匠はもっとすごいんだ」
「それでも、これは達人の域だよ。いろんなものを食べて来た私が言うんだから間違いない!」
「ははは、自信になるよ、ありがとう」
この子ずっと無表情だったけど、こんないい笑顔するんだ
可愛い
食べ終わった
もう終わってしまった
もっと食べたかった
と言うわけで夜はミタキくんが働いてる料亭に行くことにした
料亭の名前は久遠の花
ものすごく高級そうで、一回の食事で数万円とかいきそうなところだったけど、トガツメヒメさんが払ってくれるみたい
「さて、ミタキの料理がどれほどの腕になってるか、わらわも楽しみじゃ!」
「ありがとう母さん。精いっぱい頑張らせてもらうよ」
ミタキくんの頭をよしよしと撫でるトガツメヒメさん
彼は嬉しそうに笑い、料亭の中へ入って行った
私達は座敷の方へ案内されて、しばらくすると料理が運ばれ始めた
始めは根菜類のお漬物だった
程よい塩梅で、すっきりとおいしい
次は小鉢
牛肉らしきお肉の上にウニが乗ったものが小鉢に入っていた
その他には煮物もあった
どれもこれもが最高のお味
メインは大きな焼き魚!
タイに似てるけど、色が真っ白だ
「あ、お刺身! これ私大好き!」
すっかりお刺身の虜になっているフィオナちゃん
あっという間に食べ終わると、デザートが運ばれてきた
和菓子に抹茶、だと
これは嬉しい組み合わせ
和菓子も上品な甘さで、抹茶によく合う
「どうだった母さん? 僕、今日の料理は全部担当させてもらえたんだ」
「うう、うううう」
「母さん?」
「こんなに立派な料理を作れるようになって!! わらわは嬉しいぞ!」
もみくちゃにされるミタキくん
それほどまでに息子の成長が嬉しいんだろうねトガツメママ
まだ名所はあるみたいなんだけど、一番の見どころは見て回った感じかな?
明日発つことをトガツメヒメさんに言って、城に帰ってゆっくり休んだ