新しい旅4
移動はなんと車だった
はい、異世界人の技術を積極的に取り入れているためです
見たこともないカプセル型の車で、魔力で走るエコカー
花見専用なのか、周りの景色がすごく見やすいんだけど、周りからは中が見えないって構造
「ふわああああ、ふわあああああ!」
フィオナちゃん大興奮です
窓に張り付いて離れない
それくらいに美しすぎる光景だった
散った花びらは白桃色の絨毯、サクラの気は正に満開になっていて、前世でもこれほどの光景はそうそうない
「いかがですか? あちらでお団子やお餅、お菓子や飲み物が買えるので、何か買って来ましょう」
車は自動運転で動き、設定されているのかそれともエンキさんの命令を聞いているのか、勝手に動いて屋台まで来た
屋台はドライブスルーのように車で買えるようになっていて、それぞれの店に人はおらず、ロボットのようなモノが立っていた
「お団子と、桜餅、それから・・・」
エンキさんが次から次へと注文していく
「エ、エンキさん、そんなに食べれないですよ」
「そうですか? 余裕だと思ってましたが・・・」
かなりの量の食料、飲み物を買いそろえて花見場所へ戻る
そういえばこんなにきれいな場所なのに私達以外に客が見えない
「エンキさん、なんで私達以外いないの?」
「ああそれは、少しの間だけ貸し切りになっているからですよ。あなた方はトガツメヒメ様の大切なお客人ですから」
「それはありがたいです」
私たちの質問に快く答えながら、彼女はすでに両手にお団子串をいっぱい持っていた
「あ、兜を取り忘れていました」
一旦右手に持っていたお団子を置くと、兜を取るエンキさん
「おおおおおお」
桜の花に勝るとも劣らない美しさ
空のような長い青髪に黄色の瞳、おっとりとした垂目の顔立ちの優しそうなお姉さんって感じだ
「あ、あまりじろじろ見ないで下さい。恥ずかしいです」
「あ、ご、ごめんなさい。あまりに綺麗だったので」
「フフ、お世辞がお上手なのですね」
お世辞じゃないけどまあいいか
再びお団子を持ったエンキさんは、片腕に持った四本の団子串を、ムシャァと、一口で、食べてしまった
ただその食べ方も上品で、見ていて気持ちがいい
「どんどん食べてくださいね。わたくし誰かがたくさん食べているところを見るの、大好きなんです」
「それじゃあ遠慮なく」
すでにいただきますをして桜餅を頬張っているフィオナちゃんと一緒に、私も桜餅を食べながら美しいサクラをじっくりと堪能した
ちなみに相当な量あった食料は、お酒も含めてほとんどをエンキさんが平らげた