決戦29
「異界、異界に行けた」
自分でも出来ると思ってなかったから驚いてしばらく呆けてしまった
でも中でアラマキさんとナジュカが戦ってる
ナジュカの方が押してるみたいだ
あのアラマキさんの剣術をいなして、隙をついて来るなんて、ナジュカは技術も優れているみたい
「おお、ミア! こちらに来れたんでござるな、わっとっと、ぐわ!」
ザシュっと爪の攻撃でアラマキさんの腹部がえぐれる
「ひえっ」
「む、内臓がこぼれているが大丈夫でござる。こ奴この世界では奪ったものを隠せないようでござる。ほれこの通り」
内臓が元の位置に戻り、奪われてお腹の肉や骨が戻って行く
うぐぇええ、えぐすぎる
でもこれで奴のアドバンテージがなくなった
これでただ強いだけの魔物になったようなもの
「アラマキさん、一気に畳みかけよう」
私は人間体になり、刀を取り出した
これでも私、前世では剣道を習ってたし、クロに特訓も受けてた
アラマキさんほどの達人とはいかないまでも、食い下がるくらいはできる
それに、この体は私が一番使い慣れてる人間体だからね
「おおその姿! 本気でござるな」
「本気と言うか、ああいうタイプはこの姿の方が戦いやすいかも」
刀は前にトガツメヒメさんがくれたただの刀
一応業物だけど、名前はまだない
「面白い構えでござるな」
「剣道って流派?の構えだからね」
「ふむ、異世界人がたまにやってるやつでござるな」
ナジュカの猛攻が始まる
目で追えないほどだけど、私とアラマキさんは感覚だけでそれを受ける
精霊になったおかげか、そういうのに敏感になってるんだよね
あと時空干渉のおかげでもあるかな
「零式、竜の咢!」
「突きぃいい!」
アラマキさんと私の貫きがほんの少しの隙を見せたナジュカの胴を刺し貫く
「ギギ」
初めて声を発するけど、こいつの声はまるで機械音のようにノイズが混じってて、気持ちが悪い
刺されても手や足を滅茶苦茶に振り回して抵抗してくる
懐に潜り込んだおかげでその攻撃は大振りになり、私達も難なく避けれるようになった
やがて、ナジュカは大量の黒い血液を吐き出し、息絶えた
長い髪に隠れた顔が倒れたときに見えたけど、とても言い表せないほどの・・・
こうして私達は強敵の異界の魔王ナジュカに勝てた
もしこいつが魔神になっていたとしたら、恐ろしいよ