猫の力20
威嚇を気にも留めずそいつは私を一瞥すると、四本の腕を振り上げて走り出した
まだターナーさんを狙ってる
てんで無視だね
でもそうはいかない。今こそ私の力を見せる時!
猫魔法、ニャンフレア!!
「フニャアアアアアアアア!!」
尻尾から炎の塊が出て、化け物の手に当たった
すると当たった場所から炎が広がって行って、腕の一本を炭化させてしまった
「手手手手!! 焦げた焦げ焦げ焦げ焦げ焦げげげげげげ!!」
ぎろりと私をにらむ
目は相変わらず虚ろだけど、ヘイトは明らかに私に向いた
もう一度! ニャンフレア!!
危険と認識したのか今度は腕を地面にたたきつけて高くジャンプし、避けてしまった
でもそんなことはお見通し
ニャンフレアはクイッと曲がって飛び上がった化け物を追撃する
胴体に見事に命中して、燃え上がる
「ぐっがあああああ!! いだいいい! いだいいいい! だずげで、だず、げ、で」
地面に落ちた化け物が燃え上がり、断末魔の叫びをあげながら燃え尽きた
あの声、耳に絶対残る
「ミ、ミア、お前魔法まで使えたのか! 凄いぞ! それにまた助けられたな。ありがとうな!」
ターナーさんが私を抱っこしてわしゃわしゃと撫でる
ちょっと痛い
「ターナーさん! その猫は・・・?」
「俺の可愛い飼い猫だ。幸運を運んでくれる」
「んな!」
お、騎士たちが私の可愛さにメロメロになってる
魔法を使うなんて絶対普通の猫じゃないけど、私の可愛さはそんな疑問も吹き飛ばすらしい
多分バステト様の加護が働いてるんだと思うけど、便利~
それにしてもこの化け物、なんだったんだろう
ある程度の知能はあるし、喋れてるし
喋ってる言葉も支離滅裂ってわけじゃなくて、ちゃんとその場に応じた言葉だった
つぎはぎの体
私が思ってるようなものじゃないことを祈るよ
怪我人も少しいたけど、全員が軽傷
私がターナーさんの致命傷も治したからすぐにでも馬車で出発できる
化け物の死体も一応積んで王都へ
この事は王様に報告される。当然ね
馬車はこの後順調に進んで、無事王都へと到着したよ