フィオナ12
アコの部屋を抜けると光る扉があり、四人はそこを通って外に出た
なんと皇宮の目の前に転移され、突如出てきたため衛兵たちに驚かれた
「ワ、ワサビちゃんか。急にびっくりするじゃないか。どうやら迷宮は無事クリアしたみたいだね」
ワサビはその愛らしさから帝国ではアイドル並みの人気を誇っている
そのため顔を知らない者はいない
「お、そっちはバララスラの勇者だね。ワサビちゃんが世話になったね」
衛兵の男はポケットから飴の包みを取り出すと、ワサビ含めて全員に好きな味の飴を渡した
どうやらワサビにフィオナが同行することも伝わっていたらしい
「おお、勇者様! 戻られましたか!」
そこに星の模様が入ったローブを纏い、目隠しをした女性が現れた
帝国十二覇人の一人、星詠み族のティンクルウス・スターレインだった
彼女はワサビの手を取ると、そのままどこかへ連れて行こうと歩き出した
「んわあななな」
「ま、待ってください。ワサビちゃんをどこへ?」
「あ、そうだ! あなた方も来てください! 帝国領のシウミナと言う街の北部に、現在世界中を騒がせている復活魔王が現れたのです! やはり私の読みは間違っていなかった。星の巡りが復活の予感を告げていたのです。かの魔王の名は怒りの魔王ウガルガルフ。常に怒りを全てにぶつけている厄介な魔王です」
事情を聞いたフィオナ達はもちろんウガルガルフを打倒するため、協力することを約束した
「星の軌道!」
ティンクルウスが星魔法という特殊な魔法を使い、一瞬でシウミナの街へと移動した
この魔法は一度行った場所ならどこだろうと転移できる魔法で、帝国内なら全てを網羅しているようだ
「急がないと街に被害が」
ティンクルウスがそう言いかけたその時、街の北口で火柱が上がった
「遅かった! 急いで皆! コメットダッシュ!」
全員の星魔法による速度上昇を付与する
「わ、すごい速さで走れるのだ!」
北口まで来ると、その門を怒りに任せて破壊する大男がいた
頭に巨大な角があり、まるで猛牛のようだ
男は門を破壊しつくすと、駆け付けた衛兵たちを殴って吹っ飛ばしていく
その力はどんどん増していき、このままでは死者が出そうな勢いだった