フィオナ10
第三階層
勇者として本格的に覚醒したフィオナ
その力は愛、愛の勇者としてフィオナは自身の勇者としての力を認識している
その力にさらに思いの力が加わっている
覚醒したフィオナは、この世界で最も強い勇者と言われている光と闇の勇者をもしのぐほどだろう
「あ、やっぱり扉がある。今度は一つだけだね」
第三階層にある扉は一つだけ、フィオナはその扉に手をかけてゆっくりと開く
そこにいたのは黒いスーツをぴっちりと着こんだ美しい女性
彼女は吸っているタバコを手で握りつぶしながらこっちを見た
「来たか、まず初めに名乗っておこう。俺は十二獣神、人神のアコ」
アコと名乗る神聖な気配のする女性は黒い手袋をした腕をパシンと打ち付けて鳴らすと、格闘技のような構えを取った
「今までの状況は見ていた。その力、お嬢ちゃんにふさわしいのかどうかを見極める。そのために俺が来た」
前階層のゴルディアも相当な強者だったが、彼女はさらにもう何段階か上にいるのがすぐに分かった
「神剣、ヒーヒーハー」
ワサビは自身の持つ最も優れた剣を出し、フィオナもそれと同時に剣を構えた
「この剣は斬られれば全身に鋭い痛みが走って動けなくなるのだ!」
「そっちの勇者もなかなかの逸材そうだな。いいぞ、かかって来い」
勇者二人が直ぐに動いて左右から斬りかかる
しかしその剣を簡単に手で受け止めてしまった
「ハァアアア!!」
フィオナはさらに力を込めて剣で押し切ろうとするが、アコに掴まれた剣はびくともしない
「そら」
二人は腹部に蹴りを叩き込まれて転がる
「カード魔法、スロウ!」
「フレア!」
エルヴィスとメアリーが蹴りの後隙を狙って魔法を打ち込み、それが直撃した
スロウは動きを遅くする魔法、フレアは炎系でも上位の魔法だったのだが、その二つの魔法が彼女にはまったく聞いていなかった
スーツにすら少しすすがついた程度で、手でパンパンと払っただけで元通りに
「ラヴァーソウル!」
フィオナはすでに勇者としての力の使い方を認識していた
力が全身を包む鎧となり、勇者装備と結びつくと、白桃色の美しい装備へと変化した
「ラヴァースラッシュ!」
同じく白桃の剣となったセイヴハートでアコを斬る
「ほぉ・・・」
アコは感心したようにその剣を避ける
「ふむ、これは興味深い。神の体を傷つけるほどか」
アコの頬からツーと流れる血
それを手でぬぐうとニタリと笑った
「俺も毒されたか? 神々に。こういう成長が一番好きだ。まあ娘の成長が一番好きなわけだが」
アコは元々人間だったが、とある事情でまだ幼い女神を育てていたため、その影響で自信にも神力が宿り、神として再誕した異色の経歴を持つ
その強さは、神々の中では下の中ほどではあるが、当然一世界の人間で太刀打ちできるようなものではなかった