タルニャ6
不可視の手足は自在に動く
「これが、わたくしの勇者としての力ですの?」
まだその力が覚醒したのかは分からない
不可視の手を操っていると、長い廊下が短くなっており、すぐ先に扉があるのが見えた
「扉? もしかして次の階層への扉なのでしょうか?」
恐る恐る扉を開けると、やはり次の階層へと繋がっていた
二階層
今度は部屋が一つあるだけの大きな空間に出た
「何もありませんわね」
部屋はただ広いだけで、次の階層への扉もないただただ広い部屋
その広い部屋を見て回るが、何も起こらない
「またここで何か起こるのでしょうか? あれは怖かったですが・・・。いいえ、心を強く持てば、何を臆することがありましょうか」
フンスと鼻息を吹いて、気合を入れなおすと不可視の手であたりを探ってみる
下手に本来の手で罠のようなものを作動させないためだ
すると、部屋の隅に目に見えない何かがあることが分かった
「これ、なんなのでしょう?」
不可視の手で触ってみても何も起こらなかったため、素手で触ってみると、置物のようなものがあるのが分かった
それを撫でて少しずつ形を理解していく
「鱗、尖った牙、翼はないから龍のようですわね」
ここから遠く離れた島国に伝わる神獣、龍
竜とはまた違ったもので、龍は神の使いとなる
そんな龍の置物がそこにあるようだ
「あら、これは、口の中にスイッチが」
そのスイッチを押すと、周囲に煙が立ち込めてきた
「ま、まさかまた幻覚の類ですの!?」
慌てて口と鼻を布でふさぐと、幻覚の煙ではないことが分かった
そこには小さな龍が現れており、ジッとこっちを見ていた
「まぁ可愛い」
タルニャが手を出そうとすると、龍は威嚇してきた
そしてみるみるうちにその大きさを変える
「ひっ」
かなり大きな龍で、全長は二十メートルはありそうだ
それが大きく口を開けて襲い掛かって来た