魔王の王28
塔に入るとここで研究をしている魔術師たちがたくさんいた
魔術師らしいローブ姿の人もいれば、白衣の人、カジュアルな服装の人、スーツを着ている人など様々
自由な働き方がこの都市の根本にあるらしい
「おや、勇者がここに何の用かの?」
突如後ろから声がしたので振り返ると、そこには幼女がいた
小さい。五歳くらいかな?
「どうしたのお嬢ちゃん、迷子でござるかな?」
「いやわしは」
「ほら、お母さんかお父さんは? あ、そこの人、この子迷子みたいなんでござるが」
「いやじゃからわしは」
「あ、その人賢者様っす」
「はい?」
「だからこの都市の最高責任者。この塔の創設者にして大賢者ルディオンさんだよ」
歩いてた魔術師のお兄さんはそれだけ言うと資料をみながらブツブツと言いつつ去って行った
「は? え? これが、大賢者でござるか? え? 子供・・・」
「誰が子供じゃ誰が! いやまあ見た目はそうか。じゃがこの立派な脳みそは三百年以上使った自慢の脳みそじゃ。この姿はな、少し前に作り出した魔術薬を飲んだらこうなってしもうたんじゃ。わしとしたことが配合を間違って、若返るつもりが若返った上に美少女になってしもうたわ」
「自分で言うのね・・・」
「何じゃ猫、可愛いじゃろどう見ても。まあ若返ってはおるからこれで良しとしたんじゃが、背が足りん。いちいち助手に抱っこしてもらったり手伝ってもらわにゃならん」
ちっこい賢者はぶつくさと一人で文句を言い続けている
「あの、賢者様。なぜ私達が勇者だって気づいたんですか?」
「何じゃそんなもん、視たら分かる。わしも一応魔眼を持っておるからな。まあ研究の副産物じゃがの」
まあ賢者なんだからそのくらいできるか
「それで勇者が何の用じゃ?」
「えっと、これを見て欲しくて」
フィオナちゃんが瓶に入った黒い物体を取り出す
「む、これは! この量! どこで手に入れたんじゃ!? これを待っておったんじゃ! このサンプル、わしにくれんか? もちろんこれに関する情報はちゃんと渡す」
「じゃあ調べてくれるんですか?」
「うむ、復活魔王の体から見つかったんじゃろ? わしの所に来るのは本当に一滴ほどの少量じゃったからな。これがあれば成分分析がはかどる!」
「よろしくお願いします」
「うむ、結果は一週間以内にはわかるじゃろう。そのあいだこの都市を自由に見て回ってもらって構わんぞ。ほれ、これを全員に渡しておく」
ごそごそと身の丈に合っていない長いローブからバッチを取り出すと、私達につけてくれた
もちろん私以外皆しゃがんでつけてもらう
「これがあれば自由にどこでも見て回れるじゃろ。あとは任せて行ってきなさい。宿もこの塔にあるから、そこに用意しておこう」
「ありがとうございます!」
話はうまくまとまって、しばらく魔術都市を観光することになった