猫の力13
街の名前はラダート
副都ほどじゃないけど結構大きな街
周囲を高い壁に囲まれてて、よほど強い魔物じゃない限りは入れない
空を飛ぶ魔物に対しては結界が張ってあるから通れない仕様
「すまないフィオナ、俺はこの街で少しやることがあるから、またメアリーたちと一緒にいてくれ」
「うん、大丈夫だよお父さん」
フィオナちゃんはいい子だなあ
でも寂しそう・・・
よし、この街では私がずっと一緒にいようっと
宿屋、というよりまたホテルみたいなとこに泊まることになった
豪華絢爛とまではいかないけど、そこそこいいホテル。朝はビュッフェスタイル。なわけないか
ビュッフェスタイルを朝食に出すなんて地球での話だろうし
そもそもこの世界にビュッフェがあるかも分かんないし、まず私は猫だからそういったところに行かない
そんなことはさておき、宿屋でくつろぎ始める私とフィオナちゃん
ここ猫オッケーなんだね。ていうか前の宿屋もその前も、私は当たり前には入れてた
どうやらこの世界にはテイマーという職業があるみたいで、テイムした魔物や動物と一緒に泊まる冒険者が多いから、私がいても嫌がられないみたい
「お父さん何しに行ったんだろうね? またお友達に会いに行ったのかな?」
「んなん?」
私もわからないと首をかしげるしぐさをしたけど、ちび猫ちゃんの目を通してターナーさんの行動は分かってる
ターナーさんは街にあるギルドに向かってる
冒険者ギルド
ギルドでテストを受けて、合格すれば晴れて冒険者だね
ターナーさんも一応冒険者の資格はもっていて、なんとSランクです
まあ勇者と一緒に魔王を倒すような人なんだから当然か
あ、やっぱり誰かと会ってる
「久しぶりだねターナー君」
「元気だったかスヴィラナ」
ん? え? あの耳、あの尻尾
まさか、まさか、まさかもう見れるの!?
兎耳に兎の尻尾
間違いない、獣人だ
いるのは分かっていたけど、この国にはあまりいないって話だったから、こんなにすぐに見れちゃうとは思わなかったよ
猫獣人じゃなかったけど、獣人がこうして動いて話してる。それだけでぼかぁ幸せなんだ
そしてこの兎お姉さん、胸おっきい!
前世の私も大きい方だったけど、彼女私の倍くらいある!
「まさか君から呼び出されるとはねぇ。腕が治ったって聞いたけど、本当だったんだねぇ」
「ああ、うちに幸運を呼び寄せる猫が来てくれたからな」
「猫?」
「ああいやこっちの話だ」
「で? この僕に何の話?」
「帝国が動き出してるのは知っているか?」
「えー初耳ー」
「お前・・・。たまには世間に目を向けろって。ほとんど隠匿賢者じゃないか」
「そんな、照れるねぇ」
「はぁ・・・・。まあいい、それで問題ってのは、帝国がなぜか勇者であるフィオナの存在を知っていたこと、殺しに来ていることだ」
「なんですと!? そんな馬鹿な、情報が洩れるはずがない。だってあのとき」
「ああ、国が滅んだ時、勇者の血筋は耐えたと世界には知られたはずだ。次の勇者はまた神に選ばれた者がなると。絶対に知られるはずはないんだ。あの時あの場にいたもの以外には・・・。国を滅ぼした帝国軍はあいつが死を賭して全滅させた・・・。生き残りがいたのか?」
「やっぱりね、君は疑わない、仲間を。まああいつらがそんなことするなんて思わないけどさ」
「ともかくフィオナの情報がどこから漏れたか、お前に調べてもらいたい」
「おっけー」
「なんだ、渋るかと思ったが二つ返事とはお前らしくもない」
「・・・。勇者の娘だよ?あいつの娘なら、僕らみんなの娘だよ。娘がピンチなら母は何としても守るのさ!」
「ありがとうスヴィラナ」
「まっかせなさい!」
あのスヴィラナさんって人も昔の仲間なのかな?
ちび猫ちゃんからじゃうまく鑑定できないけど、ちらっと見ただけでかなり強そうだった
シーフ系のスキルと格闘術系スキル
近接戦闘型プラス隠密型?
よし、この人にも別のちび猫ちゃんを付けておこう
そうやってちび猫ちゃんの情報に集中していると、突然フィオナちゃんがギューッと抱きしめてきた
「ギュニャン!」
「あ、ご、ごめんねミア」
苦しかった。でも嫌じゃないよ
フィオナちゃんは私を抱っこしたまま、メアリーのいる部屋へ向かった