勇者22
「御意」
一人の女武者が主の命を受けてうなづく
「良いか? 決して無茶はするな。相手はわらわでも得体が知れぬ。確かにお主は勇者じゃが、わらわの娘大切なじゃからの。心配でたまらんのじゃ」
「大丈夫です姫様。拙が見事その悪鬼を滅ぼして見せましょう」
女武者勇者アラマキ
トガツメヒメの養女にしてサミダレ国一の武芸者
彼女はこの国のゾンビと呪霊の間に生まれたが、両親は数百年前に暴れた呪幻の魔王の襲撃によって二度目の死を迎えた
残った彼女は、多くの孤児と共にトガツメヒメの養女となった
実はトガツメヒメの城で働く者たちはその全てがヒメの養子である
中でもアラマキは別格の力を持っていた
それもそのはずで、彼女は勇者としての力を宿していたからだ
襲撃から生き残ったのもその力のおかげと言っていいだろう
「それでは姫様」
「姫様じゃなくて、昔のように母上とかお母様とか、ママとか読んで欲しいんじゃが」
「母上とは呼んでいましたが、ママなど呼んだ覚えはないです」
「いいじゃろ別に! 誰もママって呼んでくれんのんじゃから!」
駄々っ子のようにごねるが、アラマキは苦笑いしただけでトガツメヒメの前から消えた
「まったく、ちっちゃいころはもっと可愛かったのにのぉ。皆わらわから離れて行きおるわい」
命を受けたアラマキは魔王復活の手掛かりとなるものを探すため、最もその手掛かりをつかんでいそうな勇者の元へと走った
その時速は恐らくチーターといい勝負ができるほど
初速からその速度が出せるのは彼女の能力も関係しているだろう
その見た目から女武者の勇者と呼ばれているが、本来の二つ名は違う
彼女はさらに速度を上げて行く
音速を越え、音の壁が壊れ、光速を越え次元の壁を越え、到着した
「見つけました。というよりまあ、サミダレ国からあなた達のことは捕捉していますが」
「ひぃ!」
猫と共にいる少女勇者の前に突如現れる形で次元移動を完了した
彼女の本当の二つ名
それは時空間の勇者