勇者20
第三層のドームには案の定というかやっぱりというか、クラーケンが二体いた
通常はタコがクラーケンと呼ばれるが、イカの方もクラーケンと呼ばれることがある
その辺りは彼らが深海にいるため、まだ調査ができていないからと言われている
深海に到達できたヒト族は人魚族やマーマン族でもいないからだ
そして目の前にいる二体は紛れもなくクラーケン
そして二体はすぐにこちらに気づいて襲い掛かって来た
巨大な触腕でこちらを捕らえようとするイカに対し、空中に墨を吐き、視界を奪い援護するタコ
二体は連携を取るタイプのようだ
「く、触腕が見えない」
迫っているはずの触腕は墨の煙に隠れて気配すらつかめない
墨に魔力があるため感知を阻害しているようだ
「く、やっかいだね」
「まって、私なら分かる! 水の振動、揺らぎ。グルリシア! 左へ避けて!」
「うん!」
グルリシアが左に泳いだ瞬間そこに巨大触腕がバチャーンと叩きつけられた
まともに当たっていれば即死級の攻撃だっただろう
「あ、危なかった、ありが」
「まだ! また来る!」
マーナに引っ張られるとそこにまた触腕が落ちてきた
遡る滝のような水しぶきと、津波のような波の揺れだが、マーナならばそのような波だろうと泳ぐことができた
「反撃するわ! フロスティフロッティ!」
氷の剣を作り出して触腕を斬りつけると、そこから水のカッターのような物がさらに切り裂いていき、傷口から段々と凍っていく
片方の触腕はこれにより凍り付き、無理に動かそうとしたのか粉々に砕けた
「やった!」
触腕を砕かれたことで怒ったのか、イカの方は大暴れし始め、触腕以外の触手も使って水面を滅茶苦茶に叩き始めた
だがマーナの泳ぎは完璧で、その攻撃の全てを躱しきってしまった
ただ、手を引っ張られていたグルリシアは溺れかけてガボガボ言っているわけだが
「はぁはぁ、ありがとうマーナ」
「ご、ごめんねグルリシア」
イカとタコは高速で動いた二人を見失っているのかキョロキョロしている
「槍よ!」
グルリシアはその二体の背後から槍で攻撃した
槍はグルリシアの手から勝手に動き出すと二体を貫いた
性格に心臓部を貫いたのか、二体とも沈黙した
「やった・・・。段々と苦戦しなくなってるね」
「それだけ私達の力も強くなったのかしら?」
二人は自分達が着実に強くなってるのを感じ、噛みしめながら次階層へ進んだ