勇者19
(僕は一体いつからこの槍を持っていた? 僕が物心つく頃にはもう持っていたはずだ・・・。今までずっと一緒にあったから全く気にしていなかったけど、この槍は一体なんだ?)
改めて自分の槍について考えるが、槍を相棒のように思っているため、それ以上考えることを辞めた
「傷もきれいに治ったし、もう行けそうよ」
「う、うん。よかった、君の美しいヒレが元通りになって」
美しいと言われて照れるマーナ
そして二人は次なる階層へと泳ぎ進んだ
今度は流されることはなく、広い水路になっていた
マーナが作り出した氷の土台は十分もすれば消えてしまうため、長時間は乗っていられない
そのため水中呼吸ができないグルリシアは常に水中を警戒して進むことになる
「ここまで広いんだ。絶対何か出て来るよ」
「ええ、私もしっかりと水中を警戒しておくわ」
マーナに手を引かれ、水路をゆっくり進んでいく
すると早速水面に揺らぐ何かが見えた
「ウミヘビ?」
グネグネと動いているためそれらは大き目のウミヘビに見えた
しかし近づくにつれて徐々にその正体が判明する
タコとイカに似た魔物だった
「クラーケン?」
「ううん、クラーケンにしては小さいし、魔力も少ない感じ」
さすがに海の中をよく知っているだけあって、マーナはその魔物がクラーケンとは違う魔物だということは分かった
しかしこの魔物はこの世界にはいない魔物
どう対処していいかもわからない
「ともかく倒さないと」
タコとイカは絶妙なコンビネーションで襲い掛かってくる
イカの方は鋭利なミミで切り裂こうとし、タコは漏斗部分から鉄球のような、弾のようなものを吐き出してくる
「きゃっ!」
危うく切り裂かれそうになるマーナだが、グルリシアの槍で何とか防いだ
「ありがとう」
「油断しないで」
マーナは氷の盾を展開
分厚い氷なので二匹の攻撃は通らなかった
「これならいける。槍よ!」
第二の試練以来グルリシアの槍は思うように動くようになっている
素早く動くタコもイカも簡単に捕らえて突き刺した
「よし!」
二人は着実に強くなっている
水路では無数のイカとタコが襲ってきたが、まるで手足のように思うまま動くグルリシアの槍捌きと、マーナの水氷の力で難なく突破し、第三の試練場に短時間で到着できた