勇者15
水のダンジョンと呼ばれるこのダンジョンは、水中呼吸ができることが大前提とされる
エルフであるグルリシアにとってはほぼ攻略不可能と言ってもいい場所
しかしマーナの魔法があれば、クリアできる可能性が高い
ただこのダンジョンがどこまでの階層があるのかが分からないため、そこまで魔法が持つかどうかでクリアできるかどうかが決まる
二人はいつかこのダンジョンに挑戦し、自分達のレベルアップを図ろうと思っていた
そのためそれなりに魔力は鍛えられている
「行くわよグルリシア」
「ああ、たのんだマーナ」
マーナが泡の膜を生み出して、シャボン玉のようにグルリシアを包み込んだ
この泡はマーナの魔力が切れるか、よほど強力な攻撃が加わらなければ割れることはない
そしてこちらからの攻撃は泡を突き抜けて相手に与えることができるという優れもの
「潜るよ」
二人はダンジョンの入り口から水中へと侵入していく
水はそこまで冷たくなく、マーナも心地いいというほどに適温だった
内部は明るく、ところどころに魚が住んでいることから、生態系はかなり豊かだと思われる
海水ではなく淡水なのだが、どういうわけか海魚もちらほら見られる
ただ普段目にする海魚よりも若干姿が違うため、このダンジョンに適応した生態系が独自に発達しているのだろう
マーナはそう言った情報もメモに走り書きし、このダンジョンの情報収集に努めた
魔法制御のため、戦うことはできないが、少しでも情報を仕入れて置けば、もし失敗したとしても次に生かせると考えたのだ
少しだけ残っていた情報によると、ここで死ぬことはない
窒息する前に流されるようにして外に排出されるそうだ
神の慈悲なのかどうかは分からないが、そもそもこのダンジョンに入る者も少なすぎるため、情報があまりにも少ない
何が待つのか分からず、二人は慎重に、恐る恐る進んでいった