異世界人14
トゥーは教会に保護された孤児たちと楽しく遊んでいる
その光景を微笑ましく見る異世界人同盟幹部のマアサ
マアサは若いながらもトゥーの母親代わりを買って出た少女で、見た目は二十代前半に見えるほど大人びているが、まだ十七歳の子供
しかしながらあまりにも母性溢れ、母親のような言動から、教会でもママと呼ばれて慕われている
本人も子供好きで、子供を守るためなら自信が傷つくことすらいとわないため、進んで子供達の世話をしていた
マアサの力はマザー
自身が自らの子供と認めた子供達を絶対に守る力
それが発動された時、子供を守っている間はほぼ無敵の力を誇る
ただ、普段はおとなしくおっとりしたお姉さんなので、通常時の戦闘能力はただの少女の力しかない
「ほら~、走っちゃだめですよ~」
「はーいママ!」
マアサは子供達がけがをしないようしっかりと監視している
そのため教会に努めている男性や女性たちも、安心して自分達の子供を預けていた
そんな最中、異世界人同盟を大事件が襲うのだった
上空から見下ろす何者か
それは教会近くで遊んでいる子供達を見つめていた
異世界人たちが探知や感知能力、結界などでガチガチに危険察知をしているのにもかかわらず、それは誰にも気づかれることなく教会の上に降りた
姿も見えていないのか、誰もそれに気づかない
そして
突如子供達の前に立った
「だれー?」
トゥーの前に立ったその人影は、トゥーの腕を掴むと、まるで袋にものをしまうかのようにその姿を消してしまった
「トゥー!!」
すぐに気づいたマアサが能力を発動し、人影を思いっきり殴った
バキョンという激しい音が響き、首があらぬ方向へと曲がる
だがソレは倒れなかった
それどころか
「あ、え? 私の、手」
ソレはマアサの手を引きちぎって持っていた
そしてマアサの胴を蠅でもはらうように振り、マアサは上半身と下半身に分かれその場にドサリと倒れた
「あ、あ、わ、たし、の、子供、たち、逃げ、て」
それを見た子供達は一斉に逃げ出すが、一人一人を簡単に捕まえ、ソレはトゥーを消したときと同じように子供達を消してしまった
一人残らずだ
騒ぎに気づいたケイジたちが外に出た時にはもう全てが終わっており、血だまりの中に死にかけのマアサが倒れているだけだった
「クソ! 何が起きたんだ! すぐマアサを治療! 誰か見ていなかったのか!?」
あっという間の出来事だったため、目撃者はマアサしかいない
そのマアサも口が利けるような状態ではなかった
何が起こったのかも分からないまま、ケイジは下唇を血がにじむほどに噛んでいた