暗躍
黒い影が走る
影は各地の魔王が眠る場所を訪れ、何らかの液体を垂らす
その液体は自身の指から垂れていて、それが地面に滴った瞬間、そこの土が盛り上がり、ボコボコと人型に変わる
「太古の魔王、月のルニア。別世界の魔王と聞いていたが、なるほど、これは確かに強い・・・」
ルニアと呼ばれたかつての魔王は、すっと立ち上がるといきなり黒い影を切り裂いた
「私を甦らせたのはあんた? っち、オリジナルじゃないわね私。あんたの力かしら? ったく、ややこしいことしてくれちゃって。オリジナルの気配は・・・神界ね。ともかく私はあんたを敵とみなす。ほら、死んだふりしてないで何とか言ったらどうなの?」
「さすがと言うべきか、月の魔王」
「魔王? ああ、この世界ではそう呼ばれてるってことね。あんたどこの何? 闇とも黒とも違う、混沌よりも深い深い悪意。まさか」
「知る者、か。蘇らせたのは時期早々だったか、私がコントロールできるようになったときにすればよかったな」
ルニアはため息を吐く
「あんた本体じゃないわね。ここで攻撃しても無駄か。じゃあこうするまで」
ルニアは自らの首を斬り、土くれへと戻った
「強すぎる力を持つ者はだめだな。私の力が足りない」
黒い影は自らの手を握り、開き、その手の平を見る
そしてその場から去ると、別の土地へと転移した
転移先はホビットの国ピピルタ
そこの封印された山に立つ黒い影
瘴気の魔王フロウがここで瘴気を吐き出し続けていたため、そこから数千年経っても未だに山には瘴気がとどまっている
そのため危険な魔物も発生しやすい
そんな山を散歩でもするかのように歩く黒い影
「ここが歴代最も人を殺した魔王が最後に討たれた場所か」
様々な魔王を復活させてきたが、最も凶悪な魔王を今まさに復活させようとしている
先ほど復活させ、自害した魔王はこの世界の者ではないため、次元が違うが、フロウならば自分でも操れるだろうと考えた
「魔王を復活させるたび私の力も増している。これならフロウ程度なら」
そして黒い影は指から液体を滴らせ、瘴気の魔王フロウをよみがえらせた