魔王との戦い24
魔王ハーモニー
呪いの歌を歌い、国をいくつも滅ぼした女性型魔王
その歌声は美しく、ある程度魅了効果もあるらしく、魅了された者が近づき、呪われ、その呪われた者が戻ってくることによって呪いがさらに振りまかれてしまう
それが繰り返されていくつかの国が消えたっていう結構恐ろしい魔王
「呪いは今はないけど、ここまですごい叫び声、不気味だし頭が痛くなるね」
多分そんなことをエルヴィス君は喋ってるんだろうけど、何を言ってるかは分かんない
口の動きを見ておおよその予想を立てて理解してる感じ
読唇術ってやつだね
全然音が聞こえない中、冒険者たちがなすすべなく帰って来たハーモニーの元へ
ハーモニーは遺跡のような場所の瓦礫の上で、歌を歌うように叫んでいた
涙を流しながら
「泣いてる?」
みんなもそれに気づいたのか、ゆっくりと彼女に近づいている
すると彼女は私達に気づいて叫ぶのをやめ、私達に向かって話しかけ始めた
「耳栓、取ってみる」
私は耳栓を取って彼女の話を聞いてみた
「勇者ね? 私を倒した勇者とは違う、私はもう死んだはずなのに、歌を歌えないはずなのに、私はここにいる。でも、歌えないの、歌が歌えない私は私じゃない。私はもう歌えない。こんな、声じゃ歌えない」
嘆き、悲しみ、それを一気に吐き出すように
ハーモニーは悲しそうに私に話した
彼女の声はかすんでいて、伝承にあるような鳥のさえずりのような歌声には程遠いと思う
それに対して彼女は泣いていたんだ
「誰が私を甦らせたの? こんな声じゃ、私は生きていたくない。ねえ勇者、私を眠らせて、こんなの耐えられない。お願いよ勇者」
同じだ
さっき眠りについてもらった魔王と同じ
ただ不完全に甦らされてしまった
いったい魔王たちを甦らせている奴は何を考えてこんなことをしてるんだろう?
まるで、何かの実験みたいに
「分かったよ。貴方をまた眠らせてあげる。フィオナちゃん・・・」
「うん、耳栓はしてたけどだいたいわかるよ。このひとも悲しんでる」
フィオナちゃんはセイヴハートを構え、その優しい剣技で彼女の首を落とした
そして首が落ちる瞬間、彼女は
「ありがとう・・・」
確かにそう言った