魔王との戦い9
でも見たところ特に異常はなさそう
風で波が少したってて、たまに魚がピチャンと跳ねてるくらい
私は湖の水辺に近寄って水を飲み始めた
ハッ、つい飲んじゃった
なんか恐ろしく自然に飲んじゃった
でもここの水、ものすごくおいしい!
軟水っていうのかな?
喉ごし爽やか!
「おいっし!」
思わず声が出る
「ああ、ここの水は皆飲み水として使ってるくらいに綺麗だからね。それに魔力も通ってるから、体調もよくなるよ」
温泉の効能みたい
でも確かに、なんか元気でたかも
もう少し飲もうとまた水辺に近づくと、どこからともなく歌声が聞こえてきた
なんだろう、なんだかとってもいい気持ち
私はその声に誘われるかのように湖面に向かって歩いて、段々と体が沈んでいく
「ミア!」
フィオナちゃんが慌てて私を抱え上げる
「はれ? え? 私何してたの?」
何だか頭がボーっとしてて、自分でもどうなったのか分からない
「ミア、大丈夫? なんだか変よ」
「んと、これ、なんだろ、催眠みたいな感じが」
まだはっきりとしない頭で自己分析してみると、何かの催眠にかかってるのが分かった
その効果はまだ続いていて、フィオナちゃんに抱えられてなかったらそのまままた湖の中にダイブしちゃいそう
でも私は妖力を体内に流して、その催眠を解いた
「ふにゃ! 私を操ろうなんてとんでもないことしてくれるじゃない! どこのだれ!」
私は湖に向かって吠えた
すると湖の中からぬるりと、ドロドロに溶けたかのような化け物が現れて、ニタニタ笑いながらこっちを見た
その目を見てるとまた、私は湖の中に飛び込みそうになる
「これ、やばい、こいつ、の、歌、聞いちゃ駄目、目を、見ちゃ駄目」
私はそれだけ言って、湖の中にぼちゃんと飛び込んでしまった
なんとか力を振り絞って水中で息ができるように鰓呼吸にするための妖術をかけた自分を褒めてあげたいよ
霞がかかったかのような意識の中、私はその化け物に抱きしめられて、湖の奥底へと引きずり込まれて行った