鬼神
真っ赤な角を持つ美しい女性と、小さな少女
二人は双子なのだが、どういうわけか妹の白い方の少女は子供の姿のままだ
二人は鬼神という神の力を持つ鬼達で、黒い方が姉のクロハ、白い方が妹のハクラという
一目見ればその二人の美貌に酔いしれるほど美しく、神の中にすら求婚するものが後を絶たない
「ここがバステト様の管理してる世界? 結構種族が多いね」
「ここも私達の故郷同様に多種族世界のようね」
「それで? アンノウンってどこにいるのかな?」
「たぶん前みたいに自分の世界に引きこもってるんでしょう。現れたという場所に行けば入れるわ」
「そうだね」
クロハがそう言うと、二人はぴったりと合った息で同時に転移し、精霊国の王宮へと現れた
しかしその二人に誰一人として気づく者はいない
それほどに彼女たちの気配はなかった
そして空間を見つめる
「ハクラ、離れて。私の力を使うから」
「うん」
クロハが空間に手を翳すと、ビキビキと空間に亀裂が入り、ミア達が精霊の王女を救い出した穴がぽっかりと開いた
「行くわよ」
「緊張してきちゃった」
二人共、一切の躊躇も恐れもなく中へと入って行く
ミア達と同じように真っ直ぐに奥へ奥へと進んでいくと、実験室のようなものが見えた
しかしそこに何の生物の影もなく、ここの主は既にいなくなっていたようだ
「取り逃がしたってことかな?」
「はぁ、やっかいなのが逃げてるわね。こういうタイプのアンノウンは見つけにくいのよね」
「あ、お姉ちゃん、何か落ちてるよ」
ハクラが地面に落ちていた紙を拾い上げる
そこには訳の分からない文字で何かが書かれているのだが、クロハが察するに、ここで行なわれていた実験内容のようだ
「少なくとも文字や言葉を理解し、他生物を実験動物として扱う位の知能はありそうね」
「なんかここ、すごくやな感じ」
「そうね、殺された人々の怨念も溜まってるわ。あまり長いするのもよくなさそう。この空間は完全に閉じてしまいましょう」
「うん!」
二人は空間から出ると、今度はハクラが力を使い、完全に空間を閉じてしまった