猫の力1
ヴァレスクが村から帰った直後
ふう、やっぱり馬車って慣れないなぁ
がたがた揺れて気分が悪くなるし、椅子が固すぎて体が痛くなるし・・・
いやまあ私はクッションを敷いてもらってその上で寝てるんですけどね
猫の役得役得
帰って早々に村長にターナーさんが呼ばれた
何の話だろう?
私とフィオナちゃんは話に加えさせてもらえなかった
でも大丈夫
そんなときのために用意しておりました。とても小さな猫ちゃんです
なんとこの猫ちゃん、分体の一体でして、どこにでも入り込めるよう手の平サイズなのです
この子に頼んで様子を見てもらうことにした
「じゃ、頼んだよ」
「んみゅ!」
あ、かわいい、何この子滅茶苦茶可愛いじゃないの
ちび猫ちゃんはテトテトと歩いて村長宅へ行ってしまった
さて、感覚共有っと
ちび猫ちゃんの視界と耳を共有して、私とフィオナちゃんは家に帰った
そのままクッションに飛び乗って眠るふりをする
これは感覚共有に集中するため
「フフ、ミアも疲れたのね。私もちょっと寝転がろうっと」
馬車での旅は子供にも過酷だもんねぇ
私の横でフィオナちゃんも転がると、すぐにスースーと寝息を立ててしまった
さてと、ちび猫ちゃんはうまく潜り込めたかな?
ちび猫ちゃんの目を通して見てみると、ちゃんと村長の家の中に入り込んでいる
村長とターナーさんの姿、村長の奥さんの姿が見える
この二人、子供はいない
村長とは呼ばれているけど、先代の村長が早くに亡くなったので、息子のカートさんが継いだんだけど、まだ十代後半だから、幼馴染で奥さんになったマールさんとの間に子供はいない
まあ新婚だからね
「なんと、大魔術師のヴァレスク殿が・・・」
「そうなんですよ。なんでも帝国の動きを探るとかでして」
「そうか、あの方が動くのならば帝国がなぜフィオナの存在を知っていたのか分かるだろう。それでヴァレスク殿は何か連絡手段を渡してくださったか?」
「いえ、それが何も・・・。あの方のことですから忘れているのかと」
「だろうな」
誰だろうヴァレスクさんって
ターナーさんたちがあの方呼ばわりしてるってことは、すっごく偉い人ってことだよね
大魔術師かぁ。すごい魔法を使いそうだから、今度会ってみたいなぁ
二人の会話はそのくらい
あとはもし村にまた帝国騎士が来た時は、ターナーさんが対処することになった
どうやらターナーさんは、腕の怪我さえなかったら相当強いみたい
まあ前勇者のパーティーメンバーだったんだから当然か
魔王を倒したんだし
まあいざとなったら私も戦うよ。この村の人達にはすごくお世話になってるし、皆守りたいもん