異世界人5
ヴァンガルド王国に着いたレード、ピューリー、カインの三人
そこは悲惨な状況だった
「な、なに、これ・・・。お姉様これって」
「私は報告に戻るわ。レードさん、ピューリーを守ってあげて」
「ああ」
砂漠のオアシス大都市ヴァンガルド
蜃気楼のように揺らぎ、赤く美しい街だったヴァンガルドは、燃え盛る炎と、血によって赤く染まっていた
人が、一人も生き残っていない
一つの大国が完全に滅んでいた
「と、ともかく生存者を」
「よせピューリー。お前も探知魔法くらいは使えるだろう・・・」
「で、でも、ダットソンさんは、異世界人同盟でも、最強の一角で」
「精霊魔法が使われた形跡がある。激しい戦闘があったみたいだ。まだ彼が死んだとは限らない。俺たちがヴァンガルド内を見て来るから、ピューリーはここにいてくれ」
レードはピューリーに隠匿の力を注ぎ、完全に気配を絶った
「行こうカイン」
「・・・。うん」
中はもはやヒトの原型を保っていない死体であふれかえっていた
まるで紙でも千切るかのようにバラバラでぐしゃぐしゃ
ここまでの酷い光景を、二人は今まで見たことがなかった
込み上げる吐き気を我慢し、崩壊した王宮へ急ぐ
王宮は鉄壁の守りを誇っていたため、探知では分からない生存者がいるかもしれないとの判断だ
「この先か」
「ああ、レード、これって、人間の仕業だと思うか?」
「分からんが、魔物にしては人を殺し慣れている気がする」
魔物の場合は食べるために殺すか、縄張りを守るために殺す
しかしこの国での殺人行為は、まるで楽しんでいるかのようだった
「ここが王宮があった場所か。瓦礫の山だな」
王宮のがれきをどかすと、何かに守られた空間が現れた
「ここだ! 生存者がいたぞ!」
その中にいたのは王女一人と、彼女を取り囲むように泣いている子供達
たったそれだけだった
「無事でしたか王女様! 王様は? ダットソンさんはどうなったのです?」
「あ、ああ、あなたは、カインさん・・・。お父様は、民を守るため、自ら犠牲になりました。そこの、肉片が・・・。お父様、です。う、く、ううう」
王女の指さす方向にある真っ赤な肉片
やはり王も原型をとどめないほどにバラバラになっていた
「ダ、ダットソンさんは、どうなったのです?」
「彼は、攫われました。最後まで精霊魔法で抵抗していましたが、両腕をもがれ、そのまま」
「そんな」
「この国を襲ったのは、あれは、人間のようで、人間ではありませんでした。そしてあの顔は、私は知っています。あれは、帝国十二覇人が一人、爆砕のテンリでした」
その名前に二人は声を失った