勇者3
「ここが、バララスラですのね。わたくしの住む地底王国アースランドと違って美しい街並みですわね」
アースランド王国の大公家令嬢兼勇者であるタルニャ
彼女が身に着けるのはピンクで派手な鎧なのだが、目立つ外見とは裏腹に、その防御力は竜が噛んでも砕けないという代物
代々アースランド王家に伝わる勇者武具であった
その背にはミスリル製の魔法大剣があり、彼女は重さ五十キロもあるその剣を片腕で軽々と振り回してしまう
見た目は少しだけ恰幅のいい少女だが、ドワーフにしてはかなり華奢で、人間で言うぽっちゃり
しかしながらその肉体は筋肉の鎧でもあった
「さて、バララスラの勇者様はどちらへ行ってしまわれたのでしょう?」
聞き込みをしようにも、実は彼女、箱入りで育てられたため、ドワーフ以外の種族と会話などしたことなかった
公用語は使えるものの、どう話しかければいいのか分からないのだ
「あ、あの、その、いえ、何でもございません・・・。あ、ああああのそこのお方・・・・。申し訳ございません、何でもないのです」
こんなことではだめだと何とか自分を奮い立たせながら、必死で話しかけようとする
しかしドワーフが珍しいこの国
褐色の肌に可愛らしい見た目でも、その派手な鎧と筋肉が周りの人を遠ざけてしまっていた
「うう、どうしましょう・・・。そうですわ! 王城へ行けばいいんですわ! わたくしってばなぜこのような簡単なことに気が付かなかったのでしょう!」
ウキウキと、鼻歌を歌いながら歩きだすタルニャ
ピンクのド派手な鎧でなければすぐにでも声をかけられていたことだろう
そんな彼女に近づく影が一つあった
「お姉ちゃん王城へ行きたいの?」
小さな男の子だった
「え、ええ、これから行こうと思っていますけど」
「王城は反対方向だよ」
「え? あ」
振り向くと王城が見えた
タルニャは南の出口に向かって歩いていたのだった
「あ、ありがとうございます。危うく迷うところでしたわ」
「お姉ちゃんおっちょこちょいだね。あ、お姉ちゃんってもしかしてドワーフさん?」
「ええ、そうですわ。少し前にこの国に着きましたの」
「そっか、じゃあ僕が案内したげるね」
「いいんですの?」
「うん、その代わりお代はもらうけどね」
「ええもちろんですわ!」
タルニャは懐から銀貨を一枚取り出して渡した
「こんなに!?」
「ええ、困っていた私をたすけてくれたのですもの」
タルニャは子供、とくに男の子が大好きだった
「じゃあついてきて!」
「はいですわ」
少年について歩き、タルニャは無事王城へと来ることができた