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怠惰の王は冰焔を統べる  作者: リディリエル(四葉 六華)
第一章 黒歴史、再生!
14/27

1‐13.(……ごめんな、アヤ)

時間が足りない……

今回も文字数少なめです。

報告をし終え、目の前の人物を固唾を飲んで見守る。


「……わかった。そうしよう」


ギルドマスターのその言葉に、思わずハイタッチを交わす二人。


あの後、帰ってきた二人はギルドマスターに面会を希望。

Sランクという強権でごり押しし、報告と作戦変更のお願いをした。


「良いんですか? 変えてしまって」


「構わないさ。大本の作戦は変わらん。それに、人々の生存率が上がるのだからな」


同席したサブマスターの質問に、ギルドマスターが答える。

多少人員の変化が起こるだけで、死者数を減らせるとなれば、ギルドマスターが方針を変えない理由がなかった。


二人がお礼を言い去って行った後、サブマスターが呟いた。


「ここに来て、協力者・・・ですか……これも神のお導きかもしれませんね」


「どうだろうな。俺のところの守護神は仕事をしないことで有名だからな」


ギルドマスターの返しに思わず吹き出すサブマスターと、つられて笑うギルドマスター。

ひとしきり笑った後に、サブマスターが再度質問した。


「ふぅ……このタイミングということは、彼女が動いたんですかね?」


「おそらくな。全く、今度はどんな酔狂者なんだか」


サブマスターから視線を外し、遠くの森へ思考を馳せる。

長い耳を持つギルドマスターは、狐耳のサブマスターに聞こえないように呟いた。


「あれから三百年。目的は以前変わらず、か」


魔王に従いし神獣・・は、彼の記憶の中で微笑んでいた。



星々が輝く時間に、未だ眠らない一つの影がある。


「というわけで、よろしく頼むよ」


『……そのうち、クビになるぜ、お前』


「本望だね。あの王には忠誠心がわかないや」


窓を開け、魔力線を利用した通信で会話をしている。

防音魔導を使っているところから見ると、どうやら内容を秘匿したいようだ。

昼間いつもと違い、瞳はぱっちりと開き、髪の毛からは体内から溢れた魔力が溜まっている。


『ったく。後一ヶ月は我慢しろ。"救世主"が来るんだろ』


「あー。仕方ないね、我慢するよ。……で、返事の方は?」


ズレた話を無理やり戻し、尋ねる。

まあ拒否権など存在しないのだが。


『はいはい、適当にやっておくぜ』


「ありがとね。敵役、大変だろうけど……」


『問題ないぜ。必要経費だ』


その答えに一瞬目を伏せるが、すぐにかぶりを振って話す。

本人が大丈夫というのなら、それを信じよう。

それは自分にはできないことだから。


「ならいいや。けど……だいぶ気付かれているようだね、()()?」


『一番気をつけるのはお前だぜ、()()()。半分以上バレてるんだからな』


「気をつけとくよ。じゃ、手筈通りにね」


通信を切って、窓を閉じる。南の森に思いを馳せ、ライトは静かに呟いた。


「さて……封印の扉は開くのかな?」



黄金の光が東に煌めき、星々の灯が儚く消え去ろうとしているころ。

夜に同化した、どんな光であろうとも飲み込む闇の森にて。

招かれざる客を待つ、一つの影があった。


(今日か)


高貴な雰囲気を纏う、蒼の服に身を包んだ一人の少年──零。

こんな時間に起きている理由は単純である。眠れなかったのだ。

()()()人を殺すかもしれないという緊張もあるが……今までの記憶が主な理由だ。


──欲を満たすためだけに造った帝国──


──ストレス発散のため生まれた永久凍土──


──私的怨恨のため生まれた永久焦土──


──自分のせいで焼け落ちた公国──


自分が動いた時は、ロクなことがなかった。

消え去る時の人々の悲鳴、怒号、そして怨嗟の声。そして、恐怖に満ちた顔。

零の記憶には、それしかなかった。

自分の感情も、その前の風景も、人々の感謝の声すらも。


だから、閉じ籠った。


閉ざしていれば、恐怖は見えない。悲鳴は聞こえない。

この世界に来ても、アヤがどれほど尽くしても、それが開くことはなかった。


けれど、本当はわかっているのだ。


このままではいけないということも。

アヤがどれほど自分を思っているかも。


一昨日、彼らがやってきた時も、追い払いはすれど、怒ったり、アヤを叱ったりすることはなかった。

自分が悪いと、わかっているから。


これは、ただのわがままなのだ。


勝手にアヤを巻き込み、それでいて今度は遠ざけようとしている。


(……ごめんな、アヤ)


零の両目から、一筋の涙がこぼれた。

その意味を、自らの感情を理解しないまま、零は涙を凍らせた。

そのまま歩き出す零。


背後には、歪んだ白い塊が二粒落ちていた。



彼女は、「そのこと」を知っている数少ない一人だった。

幼い頃にそれを知ってから、数多くの勘違い野郎をブッ飛ばしてきた。

それが、自分にできる恩返しだと信じて。


今回狙うのは、最北にある国「スヌト王国」。前王はマトモな人だったのだが、王が代わってから一気に信用度が下がった。

前王の働きもあり、侵攻はしていなかったのだが……今回の宣戦布告にあたって、見せしめに蹂躙することにした。

彼女の望みはただ一つ。


(幻獣様、今助けに行きますからね!)


虐げられている幻獣たちを自由にすること。

そのためだけに、四天王第二位という地位までに上り詰めたのだ。

アイツの命令には従わなければいけないのは気に食わないが、幻獣を救出できるのなら多少の不自由さには目をつぶろう。


今回は、国の中枢に攻め入るという計画のもと、五匹の幻獣を救出する計画を立てた。

城の地下に囚われている四匹と、南の森に封印されている一匹。


一匹でも救出できれば構わない。もともと宣戦布告が目的なのだとアイツから言われている。


目下にチラリと黒いものを確認すると、彼女は翼をたたみ、ダイブの体勢に入った。

あの森に封印されているはずの幻獣を目指して。


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