31 花火
50人を超えるピーポくんたちがロックダウンくんを取り囲んでいた。
ピーポくんたちは四方からロックダウンくんに詰め寄る。
「ピピピピー! ピピピピーポ! 不審人物発見! 不審人物発見!」
「ピピピピーポ! 抵抗はやめなさい」
「ピピピピーポ! 警察に対する暴力行為は刑法第95条によって禁止されている」
「暴力なんてふるいませんよ」
「ピピピピー! ピピピピーポ! 警察に対する暴言の疑いあり」
「ピピピピーポ! 対象は殺傷能力のある器具を所持」
「ピピピピーポ! 対象は大型の容器を所持。爆発物所持の疑いあり」
「そんな。これは違うんです」
「ピピピピー! ピピピピーポ! 対象の反抗的な態度を確認」
「ピピピピーポ! 対象を不審人物から危険人物へと変更」
「ピピピピーポ! 対象の身柄を確保する」
ピーポくんのひとりがロックダウンくんを後ろから羽交い絞めにする。
別のピーポくんがロックダウンくんの首元に手をかける。
「助け……て……、息が……」
「ピピピピーポ! 危険人物の身柄確保の際に、対象の身体に著しい損傷与えても警察は罪に問われない」
「ピピピピーポ! 身柄確保の際に、対象を死亡させても警察は罪に問われない」
「ピピピピーポ!」
「ピピピピーポ!」
「ピピピピーポ!」
「おいコラ! やめろ!」
そこへ、バイクにまたがった二人が颯爽と登場した。
「おまえらこども相手によってたかって何やってんだ!」
「まったくこれだから、警察ロボットは信用がおけないわ」
サーズとマーズだ。
「ピピピピー! ピピピピーポ! 違法行動発見!違法行動発見!」
「ピピピピーポ! 原動機搭載二輪車への二人乗り及びヘルメット非着用を発見!」
「ピピピピーポ! 違法行動により現行犯逮捕する」
「ピピピピーポ!」
「ピピピピーポ!」
ロックダウンくんを取り囲んでいたピーポくんたちは一斉にサーズとマーズの方へ向かう。
「いまよ。打ち上げて」
サーズはどこかにいる仲間に無線で連絡した。
次の瞬間、大きな爆発音が鳴った。
「ピピピピー! ピピピピーポ! 異常現象発見! 異常現象発見!」
「ピピピーポ! 爆発音感知!」
「ピピピーポ!」
爆発音は次々と聞こえ、鳴り止むことがなかった。
青い空に色とりどりの閃光がまたたいた。
花火だ。
周辺の建物の中にいた人々がわらわらと外に出てきて上空を見上げる。
「今日、花火があがるなんて言ってたっけ?」
「ゲリラ花火じゃない?」
「こんな時間に珍しいねえ」
「青い空に花火ってのも悪くないな」
「ブルーインパルスに続いて花火とは、今日は景気がいいねえ」
「たーまやー」
「かーぎやー」
昼間でも美しく見えるように特殊調合された花火は、珍しさもあって大いに人々の関心を買った。
たちまち一帯は人々であふれかえった。
ピーポくんたちは突然の異常事態にあわてふためいた。
「ピピピピー! ピピピピーポ! 上空に大量の爆発物を発見!」
「ピピピピーポ! 爆発は現在も続行中」
「ピピピピーポ! 正常値を大幅に超える通行人量を感知」
「ピピピピーポ! 推奨されないレベルのヒト密度」
「ピピピピーポ!」
「ピピピピーポ!」
サーズとマーズはロックダウンくんに声をかける。
「少年、いまのうちにこれに乗って逃げな」
「え……?」
「ほら、乗った乗った」
「あの……。バイクなんて運転できないですよ」
「自動運転だから大丈夫よ」
「自転車に乗るのとかわらねえから」
ロックダウンくんは二人に促されバイクにまたがる。
マーズは楽器ケースをバイクの後部にくくりつける。
「しかしでっけー荷物だな。何入ってんの?」
「あ、いや、楽器とか、その、いろいろ……」
「これは私たちが預かっておくわね。あなたのものじゃないでしょ?」
サーズはけん玉を回収する。
けん玉の火はすでに消えていた。
「あの、どうもありがとうございます」
「気にすんなよ」
「こちらこそ変な事件に巻き込んでごめんなさいね。バイクは不要になったら適当な場所に乗り捨てていいから」
「じゃあな」
「ありがとうございました!」
ロックダウンくんはバイクに乗って、ブルーインパルスの向かっていった方向へ再び走り始めた
「にしても、アマビエのやつどこ行ったかな?」
「さあね」
「いまから探す?」
「今日はもう諦めましょう。それよりこっちの対応をしなきゃ」
このあとサーズとマーズは記者会見を行い、ゲリラ花火は地域を盛り上げるために商工会が主催したものだったと発表した。
また、パチンコPCRの炎上については、疑似火災プロジェクションマッピングを使ったゲリライベントの一環であったと説明した。
当然のことながら、アマビエ様や出火の原因となったけん玉については伏せた。
幸いにもパチンコPCRの火災では犠牲者が出なかったため、それ以上の追求は免れた。
また、ピーポくんの集団が暴走して市民に危害を加えようとしたことを訴えて、警察の捜査を牽制した。
サーズとマーズら商工会は、地域の自治を重んじていたから、何があろうと警察の介入を阻止したかったのだった。
真昼の花火は、市民にたいへん好評で、今後も定例イベントとしての開催を望む声が多数集まった。




