26 スーパーシティ
「なんか玉がどんどんなくなってくんだけど」
「ちょっとマーズ! 勝手なことしないで!」
アマビエ様は手足を拘束されていた。
首元と胴の辺りに縄を巻かれ、パチンコ台にくくりつけられていた。
背中がパチンコ台の側面にぴったりと接している。
足に力を入れてバランスをとらないと、首が絞めつけられる状態だ。
椅子に座ったマーズはハンドルをがちゃがちゃと回す。
パチンコ台の音量は最大まで上げる。
けたたましい音楽と玉が跳ね返る音がアマビエ様の耳にガンガン響く。
「音量を下げて! 耳が痛い」
「え? なに? 聞こえなーい」
サーズはアマビエ様の耳元に顔を近づけ、ささやく。
「しばらく我慢なさい。話が終わるまでの辛抱よ」
「どうせ外には聞こえない。この部屋は完全防音なの」
「それは都合がいいわね。でもさっき扉を無理やり開けちゃったでしょ。扉が歪んで音が漏れちゃってるかも。外で誰かが聞き耳を立てているといけないわ」
パチンコPCRのプレミアム会員専用ブースは完全防音で誰にも邪魔されずにパチンコが楽しめるのが売りだった。
店員の見回りも、時間制限もない。
拷問を実施するには理想的な環境だ。
「手短に終わらせましょう。まず例のモノのありかを教えて」
「なぜ私がここにいるってわかった」
「ああ!? 質問してるのはこっちだぞ! 聞かれたことだけ答えときゃいいんだよ!」
マーズはチャンスボタンを激しく叩きまくる。
パチンコ台が揺れて首元の縄がこすれる。
呼吸が苦しい。
「いいわ。お話したいみたいだから答えてあげる。私たちの情報網を甘く見ないで。この店は私たちに恩があるの。あなたに関する情報はすべて筒抜けなの。あなたがいつこの店に来て、どの台を使ったか。いつ買っていつ負けたかも全部知っているわ」
パチンコPCRのこの街への出店が計画されたとき、大きな反対運動が起こった。
スーパーシティ、先端技術の実験場として指定されているこの街に、前時代の遺物であるパチンコなどふさわしくないという声が続出した。
PCR側は、自分たちがただのパチンコ店ではないこと、最先端のテクノロジーを組み入れた、むしろスーパーシティにふさわしい娯楽施設であることを主張したが、強く反対する勢力は依然として残っていた。
PCRはサーズたち商工会に助けを求めた。
サーズとマーズは、反対する街の有力者を一軒一軒たずね、パチンコPCRの誘致がいかに街全体の利益に貢献するかを説得して回った。
かくしてサーズとマーズのおかげでパチンコPCRは無事に出店を成し遂げた。
また、実際にパチンコPCRは街一番の集客施設となった。
多様な人々を呼びよせ、スーパーシティを活性化させたのである。
サーズとマーズは見返りとして金ではなく、情報を求めた。
パチンコPCRを訪れる客の情報はすべてサーズとマーズに流れた。
不穏な兆候を示す危険分子は、しばしばここパチンコPCRでサーズとマーズによって捕らえられた。
スーパーシティの秩序はこのようにして保たれていたのだった。
「さあ次はあなたが答える番よ。アレはどこにあるの?」
「言えよ、コラあ!」
マーズがパチンコ台を激しく揺らす。
アマビエ様の目がうつろになる。
「ピロン、ポロン、ピロン、ポロン、ピロン、ポロン……」
サーズの手の中のけん玉が、突然不快な音声を鳴らしはじめた。
「緊急事態発生! 緊急事態発生! 緊急事態解決モードにしますか。課金額は20万円です」




