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みんなのコロナちゃん  作者: 新型
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10/40

10 コビット三兄弟

 午後8時。

 アマビエ様が予告した重大発表が行われる時刻だ。


 カラオケ・クラスターにいるロックダウンくんは、アマビエ・チャンネルにアクセスした。

 コロナちゃんのブースとの連携は一時的にオフにした。

 きゃりーぱみゅぱみゅ全曲チャレンジを敢行中のコロナちゃんはさっきからずっとひとりで歌いつづけているから問題ないだろう。


 8時を10分過ぎたがまだ配信ははじまらない。

 ロックダウンくんはアマビエ様のソーシャルメディアアカウントをひとつひとつ確認するが、なんのアナウンスも出ていないようだ。

 コロナちゃんは「もんだいガール」を歌っている。

 

 ときを同じくしてコビット三兄弟もアマビエ・チャンネルの配信を待っていた。


「おい。まだはじまらないのか」

「いま何時だ?」

「8時11分」

「本当に8時からって言ってたんだろうな」

「間違いない。おまえも聞いただろ」

「じゃあなんではじまらないんだよ」

「知らねえよ」

「本当に8時からなんだろうな。9時からの間違いじゃなくて」

「メッセージを送って訊いてみたらどうだ? 何時から始まりますかって」

「バカ。そんなことしたら俺たちの素性がばれるだろ」

「7時からだった可能性もあるぞ」

「それならもう終わってるじゃないか!」

「なんてこった!」


 コビット17号は大げさな身振りで頭を抱える。

 コビット18号はコビット19号の肩を揺さぶって問い詰める。


「おい、19号、どうしてくれるんだ! なぜ7時を8時と聞き間違えた!?」

「間違えてねえよ! まだはじまってないんだよ!」


 コビット三兄弟は、三人組の探偵グループである。

 本名を隠すためにお互いを番号で呼んだ。

 本当の兄弟であるかは定かではないが、三人とも同じようないがぐり頭で顔つきも似ていたからコビット三兄弟と呼ばれていた。

 依頼を受けて現在はアマビエ様を調査中だった。


「18号、落ち着いてもう少し待ってみようや。10分や20分、どうってことねえ。俺たち探偵稼業に必要なのは忍耐だろ」

「それもそうだな」

「きっと奴の時計が狂っていて、1時間進んでいるんだ」

「とすると、奴の時計ではいま何時だ?」

「いまは8時15分だから……9時15分だな」

「やっぱり終わってるじゃないか!」

「もうダメだ!」


 8時40分。

 アマビエ様の配信はいまだはじまらない。

 ロックダウンくんはコロナちゃんのブースの様子を確認した。

 コロナちゃんは「もったいないとらんど」を歌っている。

 コビット三兄弟は相変わらず今が何時なのかを議論しつづけている。


 全国のアマビエ様のファンたちは固唾を飲んで待っていた。

 「今日の配信は中止だろうか?」

 「アマビエ様の身に何かあったのでは?」

 「寝てるのではないか」

 といった声がソーシャルメディア上でささやかれた。


 もっともアマビエ様が約束を守らないのはいまにはじまったことではない。

 その日の行動を気分で決めるアマビエ様が、配信予告を反故にすることはこれまでにも何度もあった。

 たとえそうであっても信じて待ち続けること。

 このようにしてアマビエ様への忠誠心が試されているのだ。

 

「おいおい、9時になっちまったぞ」

「1時間も過ぎてるじゃないか」

「待て待て。奴の時計が1時間遅れてる可能性だってある」

「だとしたらいま何時だ?」

「ちょうど8時だ」

「つまり……」

「いまからはじまるんだ!」


 その頃、アマビエ様は手に入れたばかりのけん玉に熱中していた。

 もう配信は明日でいいかなと思い始めていた。

 ロックダウンくんは待っていた。

 コロナちゃんはきゃりーぱみゅぱみゅを歌っている。

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