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魔女物語  作者: 夜行
第三幕
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第六話

 ロゼの手は縛られ、前が見えないように目隠しもされた。さすがに魔女だとバレるのはわかっているので、隠さずにいくことにした。自分が捕まえて連行する。それが一番自然だろう。

 シェルはロープを握り歩いていく。まるで奴隷でも連れているかのように。サクラはその後ろを静かに歩く。


「詰所に着くぞ」


 小声でロゼに状況を伝えた。最初の難関だ。二人の心臓はいつもより早いスピードで鼓動をした。


「こんにちは。通っても宜しいかな?」


 通行書を見せてシェルは営業スマイルを見せた。門番はシェルを一瞥し、その後ろにいる二人に視線を送る。


「罪人ですか?」


「そのようなものです。私が管理しているので大丈夫ですよ」


 門番は普通の人間だ。魔女か人間かなど区別はつかない。そして司教にそんな事を言われては従わなくていけない。


「どうぞ、お通りください」


「どうも」


 ロープを一度引いて歩くように促す。三人はゆっくりと足を進めた。


「ど、どうも」


 サクラはぺこりと頭を下げて通過する。そのすれ違う一瞬がとても長く感じた。普段は気にならない相手の目線や呼吸などがすべて恐ろしい。声をかけられたらどうする。なんと言い訳をする? 答えは事前に決めていたか? そんな事を考えつつ、そのまま数十メートル歩いて詰所を突破する。


「ぐはーっ、もういいぞ。なんとか突破した」


「すごい緊張感だったね!」


「私は何も見えんから全然だがな」


 三人は一呼吸入れた。

 たった最初の詰所でこれだ。先が思いやれる。


「今のはただの罪人ですが、司教と出くわしたら今の通りにはいかないでしょう」


「だろうな。せいぜい頑張ってくれたまえよ」


 ロゼはのんきに欠伸をしながら言った。


「誰の所為でこんな緊張をしてると思ってやがる」


「私は目隠しで見えないからな。気楽でいい」


 退屈そうに、むしろシェルの反応を面白がっているようにも見える。


「……次に進みましょう」


 何をいったところで状況は変わらない。唯一変わるならそれはすべてを突破し終えた時だ。なら早くこの緊張感から逃れる為には先を急ぐしかない。そう思った時だった。


「おや~? シェル司教じゃないですか」


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