第六話
ロゼの手は縛られ、前が見えないように目隠しもされた。さすがに魔女だとバレるのはわかっているので、隠さずにいくことにした。自分が捕まえて連行する。それが一番自然だろう。
シェルはロープを握り歩いていく。まるで奴隷でも連れているかのように。サクラはその後ろを静かに歩く。
「詰所に着くぞ」
小声でロゼに状況を伝えた。最初の難関だ。二人の心臓はいつもより早いスピードで鼓動をした。
「こんにちは。通っても宜しいかな?」
通行書を見せてシェルは営業スマイルを見せた。門番はシェルを一瞥し、その後ろにいる二人に視線を送る。
「罪人ですか?」
「そのようなものです。私が管理しているので大丈夫ですよ」
門番は普通の人間だ。魔女か人間かなど区別はつかない。そして司教にそんな事を言われては従わなくていけない。
「どうぞ、お通りください」
「どうも」
ロープを一度引いて歩くように促す。三人はゆっくりと足を進めた。
「ど、どうも」
サクラはぺこりと頭を下げて通過する。そのすれ違う一瞬がとても長く感じた。普段は気にならない相手の目線や呼吸などがすべて恐ろしい。声をかけられたらどうする。なんと言い訳をする? 答えは事前に決めていたか? そんな事を考えつつ、そのまま数十メートル歩いて詰所を突破する。
「ぐはーっ、もういいぞ。なんとか突破した」
「すごい緊張感だったね!」
「私は何も見えんから全然だがな」
三人は一呼吸入れた。
たった最初の詰所でこれだ。先が思いやれる。
「今のはただの罪人ですが、司教と出くわしたら今の通りにはいかないでしょう」
「だろうな。せいぜい頑張ってくれたまえよ」
ロゼはのんきに欠伸をしながら言った。
「誰の所為でこんな緊張をしてると思ってやがる」
「私は目隠しで見えないからな。気楽でいい」
退屈そうに、むしろシェルの反応を面白がっているようにも見える。
「……次に進みましょう」
何をいったところで状況は変わらない。唯一変わるならそれはすべてを突破し終えた時だ。なら早くこの緊張感から逃れる為には先を急ぐしかない。そう思った時だった。
「おや~? シェル司教じゃないですか」




