第三話
「ところでシェル司教殿、アドミラル大聖堂に行って誰に会うかは決めているのか?」
言い換えると、誰が結界を張り、それを解く事ができるのか、その人物に目星はついているのかという事だ。
「一番のお偉いさんに会おうと思っている」
「お偉いさん?」
「ここのお偉いさんと言えば――」
「教皇様だ」
「そんな大物が君みたいな賊みたいな下っ端司教に会ってくれるのか?」
「一言ではなく二言余計な言葉がついてるぞクソ魔女」
「そんなえらい人がいるんだー。アドミラル大聖堂ってすごいんだねー」
実際問題、ロゼの言う事は的を射ている。そこまで到達するのにいったいどれだけの壁を突破しなければならないのだろうか。時間はあるようでない。
ネルは次の満月だと言ってた。終わりは決められている。そしてその時になればネルが張った結界は解かれるだろう。
「……今ふと思ったのですが」
シェルは自分の頭の中に浮かんだある事を疑問に思った。
「ん?」
「なんだシェル司教殿、言ってみろ」
「魔女の始祖が結界を解いたとして、教会の結界はどうなると思いますか?」
「うん?」
どうなると思いますか。どうなるのだろうと二人は考える。
「ふと、もしかして一つの結界になり、強度がなくなり勝手に壊れるのではないかと思ったんですが」
「あーたしかに」
強度がなくなった結界は消滅する。それは草木が枯れるのと同様だ。それは自然の摂理に近い。だが、ロゼは違う答えを出す。
「たしかに一理あるかもしれない。だが――もう一つの可能性がある」
「なんだ魔女」
「爆発するかもしれない」
「は?」
「ようは黒死の力に薄くなった結界が耐えられなくなり大規模な爆発が起こる可能性がある。そうなったら一気に黒死は広がるぞ」




