第四話
懸念があるとするならばもう一つ。それはこれから向かう場所が教会だということだろう。自分は魔女なので教会は敵でしかない。命を狙われるかもしれない。しかし、それは問題ではない。それは当たり前のことだ。
しかし。
しかしながら、サクラはどうなのだろうか。サクラは魔女の子だ。それが教会に知られたら人間でも人間としての扱いは受けないだろう。そうなった時にサクラは傷つくのではないだろうか。自分一人なら教会相手でも立ち回る事は可能だ。でも、サクラがいたらそうもいかなくなってくる。
果たして守れるだろうか。
リンドウとリリーの子供を。
命をかけて守らなければならないと思ってはいるが、現実がそんな甘くない事も知っている。自分一人では不安だ。シェルはおそらく板挟みになる。判断が鈍る可能性がある。その一瞬が取り返しのつかない事態を招く事があるのは事実だ。
あと一人。
あと一人味方がいてくれたら――。
しかし、自分に味方などいただろうか。他の魔女との接点など皆無に等しい。そもそもこの数十年、魔女と会っていない。それほどまでに魔女の数が激減している。
魔女狩り。
いったい何人の魔女が命を落としたのだろう。自分もいつか捕まってしまうのだろうか。
ここでふとある魔女の顔が思い浮かんだ。悪くはない思考だ。ここで思い出すという事はこれから係わりがあるのかもしれない。そうなったら心強い。
その魔女の顔を思い出しながらロゼはぽつりと呟く。
「どこにいるんだろうな、師匠」




