第二十二話
「それはまた途方もない話だなシェル司教殿」
「一度、問いただした方がいいのかもしれん」
「魔女と教会に、か?」
「そうだ。さすがに教会以外の人間は絡んでないだろう。だからそれなりに力のある教会と魔女に話を聞くべきだと俺は思うがな」
「力のある、か……」
ロゼとシェルは腕を組んで考え込む。
「司教様は力のある教会って知ってるの?」
「私がいた教会はそこそこの大きさでしたが、まだ上があります」
「なんて名前の教会?」
「アドミラル大聖堂」
「有名どころだな」
「お姉さん知ってるの?」
「まぁな」
「ここからは遠いですが、行くべきだと私は思います」
本当は行きたくないとシェルは思う。自分ひとりなら問題はないのかもしれない。しかし、この二人を連れて行くというのが問題になる。
「……正直、おすすめはしません。魔女と魔女の子ですからね」
教会からしたら敵でしかない。しかもその敵を連れて来たシェルにどんな処遇が待ち構えているだろうか。それを考えただけでも足が重くなる。
「ん~、行くべき、と思うなら行った方がいいんじゃないかなー」
サクラも危険はわかっているが、それでもといった感じだ。
「サクラがそう言うなら私はついて行くさ」
「覚悟は、出来ていると」
そこまで言われたならシェルも腹をくくるしかない。ロゼはともかくサクラだけは自分が守ってやるしかない。そう自分に言い聞かせた。
「おい、魔女。お前の知ってる魔女で一番力のある魔女はどこにいる?」
「わからん。惚けているのではなく、誰が一番力が強いなど考えた事もないしな」
「あんまりそーゆーの興味なさそうだよね魔女って」
他人に興味など持たない。それが魔女だ。
「まぁそうだろうな。一番有名な魔女がいるにはいるが生きてないだろうし」
「え? そんな魔女いるの?」
「ええ、いますよ。別名、始まりの魔女だとか魔女の始祖だとか言われた魔女がいます。かなり古い魔女で教会でわずかに文献があるぐらいです」
「へぇ、すっごい魔女がいたんだね」
「私も知識ぐらいでしか知らんな。かなり大昔の話らしいからな。生きてはいないだろう」
期待はできない。仮に生きていたとしても、他人の言う事に従うような魔女には到底思えない。しかし、そんな魔女が味方にいてくれたら心強いだろう
。
「いない人物をあてにしても何も進まない。それにもし敵対したらと思うと……」
「ゾッとするな」
シェルの言葉にロゼが続いた。それにシェルは嫌な顔せずに頷いてみせた。




