第二十一話
たしかにそうだ。見た事も聞いた事もないと言ったが、自分がそれを行っていた。灯台下暗しとはこの事だろう。自分たちが当事者だったのだ。
「いや……まぁ……」
「そう言われると……」
「ね。おかしい事なんて何もないよ。利害が一致しているだけかもしれないし、本当に仲がいい人たちがいるのかもしれないし。理解し合えるんだよ」
言葉に詰まる。
何も言い返せない。自分たちがそれをサクラに示してしまっている。どんな形であれ、協力関係なのは事実だ。
「仮に、仮にですよ? お嬢さんの言うとおりに教会と魔女が協力していたとしましょう。その協力する理由はなんです?」
「え? そりゃお姉さんと司教様みたいに黒死病を止めたいとかじゃないの? そんなに難しい答えじゃないと思うけど」
「…………」
単純な事が頭から抜け落ちている。当たり前すぎてその事を素通りしてしまっているようだ。
「俺たちは……何も知らないだけの駒、か」
「今、私たちがこうやって三人でいるのも誰かに仕組まれたもの、か?」
「ぞっとするな」
「たしかに。それは言い過ぎか。さすがにそこまでやってのけていたなら……」
ロゼは一度言葉を切り、頭の中を整理する。
「いたのなら?」
サクラが続きを促す。
「ぞっとするな」
シェルと同じ言葉を吐く。
仮に本当にそうだとしたら、もう言葉が見当たらない。その状況にふさわしい言葉など自分には持ち合わせてないのだ。思いつきもしない事柄だ。
「思いつく可能性はゼロじゃないよ。よくおかあさんが言ってたし」
世の中なにが起きても不思議ではない。それこそ突然カルマの輪を外れて魔女に覚醒したりする。そんな事を誰が想像できただろうか。
「君の母上が言っていたというのは説得力があるな」
考えるだけで時間があっという間に経ってしまうだろう。それこそ五日など直ぐだ。
「仕組まれた可能性は置いておきましょう。どうやら私達は知らない事が多すぎるのかもしれませんね」
「と、いうと?」
「魔女と教会と人間について。はたまた世の仕組みについて」




