第二十話
「どーゆーカラクリなんだろうね?」
「……どうなんだろうな」
「なんか二人とも途中に波動とか感じなかった?」
「いえ、私はなにも……」
「私もだ。誰かが隠れていたとか、そういった類のものではない」
「じゃさ、記憶を消されているとかは?」
「記憶を、ですか。そうなってくると完全に魔女がらみでしょうね。しかし、手の打ちようがない」
何も覚えていないのだから。
いくら同じように挑戦しても記憶が消えてしまえば、解決策など掴めるはずもなく。永遠と同じことを繰り返すだけだろう。
「たしかにな。しかし、私は今まで記憶を操作する魔女など聞いた事がない」
「お前が知らねぇだけだろ」
「たしかにその可能性は十分にある。あるにはあるが、魔女がいちいちそんなめんどくさい事をしているというのが想像つかんな」
「あー、たしかにな。しかもかなりの範囲を見なきゃならん。俺たちをピンポイントで見つけてそれを実行に移す? 現実離れしすぎている」
「そうだな。現実的ではない。そうなると自動で力を使ったのか」
「いや、さっきお前が言ったはずだ。魔女がそんなめんどうな事をするはずがないとな。仮に自動でやったにしろ、そもそもなぜそんな事をしている? それ自体がめんどうな事ではないのか」
「一理ある。脅されてやっている?」
「魔女がか? 教会に脅されている?」
「ありえないな」
「ありえんな」
うーん、と二人は揃って悩む。それを静かに見ていたサクラは全く別の事を思っていた。
同じ事を考えている時は喧嘩しないんだ。
このまま仲良くなればいいのに、と思った時だった。サクラの頭の中に一つの仮説が産まれた。
「あっ、もしかして魔女と教会が協力関係にあるんじゃないの?」
「協力?」
「いやいや、それこそありえないですよお嬢さん。そんなもの見た事も聞いた事もありません」
「私もそうだ。そんなものはありえない」
この二人は案外まわりが見えていないのかもしれない。サクラは何を言っているんだと両手で指をさす。
「協力してるじゃない。お姉さんと司教様」
「…………」
ロゼとシェルは顔を見合わせて固まってしまった。




