第十一話
いったいどんな生き方をしてきたのだろうか。
「まぁ、話すと言っても私が知っているのはわずか数年だ。私は士官学校を途中で辞めてしまったからな」
「どうして?」
「私は魔女になりたかったのだよ。その頃はまだ人間でな。私は小さな頃に魔女に命を救われて、それで魔女に憧れ魔女になりたいと思い学校を辞めて仲間と別れて、自分を助けてくれた魔女を探しに旅にでた」
「なんだかすごい人生だね」
サクラは素直に関心した。はたして自分がロゼの立場だったらその選択肢を選べるだろうか。きっといつまで経っても答えは出ずに時間だけが過ぎていきそうだと思った。
「私でそう感じるならリンドウはもっとすごい人生だったと思うぞ。それにアルビノも。最高の出会いをしたリンドウと最悪の出会いをしたアルビノだ。魔女と出会い、そこから人生が変わった」
「魔女って人に影響あたえまくりだね」
「そうだな。人の人生を狂わせる魔性の女だ」
「だから全員駆逐した方がいいんですよお嬢さん」
今まで黙って聞いていたシェルが横から口を挟む。
「それはダメだよ司教様。人それぞれって言うでしょ? 魔女もそれぞれなんだよ。少なくともわたしのおかあさんはまともだったと思うよ」
「…………」
シェルは一度沈黙した。話の流れを聞いていればサクラの母親が魔女だと容易に想像できる。しかし、シェルはそれをあえて聞かなかったし話題にしようともしなかった。
「シェル司教殿」
ロゼが口を挟む。
「魔女は魔女だ。人間は人間だ。そして魔女の子も人間だ。女は全員が魔女になる可能性を秘めている。親が魔女だからといっても子は一つの個人だ」
「……そんな事はわかっている」
「わたしのおかあさんはとても優しかったよ」
「そうですか。私は魔女は嫌いですがお嬢さんは好きですよ」
どうやら頭の固い司教ではないようだとロゼはため息をつく。考えは人それぞれだが、魔女の子は魔女だという人間もいる。普通ならばそう思っていたとしても、そうは答えない司教もいるだろう。どうやらシェルは理解がある、とロゼは思った。
魔女狩りの時代は魔女に疑われただけで火あぶりの刑に処された。人間だとわかっていても処刑された。人間でも魔女でも関係なく、多くの人たちがその命を奪われたのだ。そこには疑わしき者は処刑する、というルールが出来上がっていた。
もちろんシェルもそれを知っているだろう。そしてそうやって教え込まれて生きて来たのだろう。しかしシェルは自分の考えを持っている。話がわからない人間ではない。
「じゃ、司教様。仮にわたしが魔女になったらどうするの?」




