第十話
ひたすら草原が続いている。本当に世界はウイルスに侵されているのだろうかと不思議に思えるぐらいの和さだった。草原には次の街に続くであろう一本の舗装されていない道しかない。時折、商人であろう人とすれ違うぐらいだ。
世界は廻っている。
そう感じる。そして、それを守らねばと思う。
「やぁ、御三方。旅の途中かな? さっき仕入れた甘いリンゴがあるんだが、お一つどうかね?」
声をかけてきたのは荷馬車をひく商人だった。次の街への移動中だろうが、少しでも利益をだそうと声をかけてきたのだろう。
「二つ貰おうか。サクラ食べたいだろ? 買ってやる」
「え? お姉さんいいの? ありがとう」
「シェル司教殿は自分で買え」
「いらん」
ロゼはリンゴを二つ購入した。
「まいどあり」
真っ赤で大きなリンゴだ。これだけ大きければ腹はそれなりに膨れるだろう。
サクラはロゼから渡されたリンゴをカバンの中へとしまう。
「なんだ、今食べないのか?」
ロゼは自分の分のリンゴをかじりながら尋ねた。
「うん。もうすぐ日も暮れそうだし、夜ご飯と一緒にしようと思って」
「君はまだ若いのにしっかりしているな。父親とそっくりだ」
「え? そう?」
「あぁ、リンドウもアルビノも年齢の割にしっかりしていた。しっかりというか、目的を持っていたからな。士官学校で会った時にはすでに二人とも人間が出来上がっていた」
「へぇそうなんだー」
自分の知らない若い時代の父親の話。
「ねぇ、もっとお話しして」
「あぁ、いいだろう」




