表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女物語  作者: 夜行
魔女物語2
27/90

第五話

 一人は男で司教服を身に纏っている。もう一人は十五、六ほどの少女だった。


「俺が助けた!」


「違う。私が止めたのだ!」


 二人は視線をかち合わせながら喧嘩をしている。


「だいたい君はどこの誰だ?」


「はぁ? 見てわかんねぇのか、司教様に決まってんだろ」


「君のような見た目の悪い司教がいてたまるか」


「んだとこのクソ女ぁ」


「あの~、二人ともだれ?」


 きっと助けてくれたのだろうが、いきなりこんな状況で喧嘩を始める二人の顔に見覚えはなかった。こちらの質問には聞く耳を持たず、ずっと口喧嘩をしている。もちろん猪も置き去りにしてだ。

 しかし、こんな状況がいつまでも続くはずがない。猪がグッと足に力を入れた瞬間だった。喧嘩していた二人は瞬時にそれを感じとる。


「うるせぇ!」

「うるさい!」


 巨漢は宙を舞って森へと帰還する。大砲のような着地音と振動が辺りに伝わってサクラは少し気の毒に思った。


「ふん」


 と仲が悪そうなのに息を合わせる二人。いったいどこの誰なのだろうか。


「あの~、二人ともだれ?」


 同じセリフをもう一度言う。


「私は」

「俺は」


 と言葉がかぶる。するとそれが当然であるようにお互いを睨みつける。このままではらちが明かないと思いサクラは男の方から自己紹介をお願いした。


「初めましてお嬢さん。私はたまたま通りかかった司教のシェルと申します。お怪我はありませんかお嬢さん」


 そう言って右手を出してくる。


「なんだその喋り方は。気持ちが悪い」


「あぁ~? んだとコラ」


 この差はいったい何なんだろうか。単に女好きかと思ったらそうでもないらしい。


「私は世の女性の味方ですよ」


 白い歯を見せて満面の営業スマイルで笑うシェル。


「え? だってこっちお姉さんだって」


「こいつは論外です。出来ることなら今この場で殺しておきたいですね。よろしければ眼を瞑っておいていただきたい」


 顔は笑っているが冗談ではなさそうな雰囲気だった。


「はっ、君ごときが私に勝てる訳がないだろうシェル司教殿」


「俺の名前を気安く呼ぶな。魔女の分際で」


 サクラの時が一瞬止まった。

 魔女? 今たしかに魔女と言った。


「魔女? お姉さん魔女なの?」


 自分よりも少し年上に見える少女はにっこりと笑った。


「そうだ。私は魔女だ。名はロゼという以後お見知りおきを」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ