第三話
非現実的なことがあの場所を中心に起きている。
そんなことを聞いて少女の心が躍らないはずがない。
旧アルヴェルトのおおよその位置はわかっている。だが、たどり着けないでいるのが現状だった。そのことに関して母親は特に何も言っていなかった。
「う~ん、どういうカラクリなんだろ……」
あのリリーが何も言っていなかったという事はこの事に関して何も知らないという事だ。つまり自分で解決するしか方法がない。
まるで狐に化かされているかのようにたどり着けないでいる。
サクラは歩きながら右手を顎に当ててブツブツと呟きながら思考を巡らせる。
「黒死病の影響? で、方位磁石が狂っている?」
たしかにその場所に近づけばそういった現象が起こるのは確認が取れている。だが、そういった事ではないような気がする。
「中心はわかっている。だから方位磁石に頼らなくても真っすぐ進めば着くはず……なのにスタート地点に戻ってしまう……これ如何に」
惑わされている。
誰に?
何のために?
「う~ん、う~ん……」
いつの間にか森を抜けそうだった。
「誰に? 誰が? あれ?」
何かが浮かびそうな気がする。
「仮に、仮にそんな事が出来るのって……」
そんな誰かがいたとして、出来る人物は限られている。
サクラの出した答えは――。
「もしかして、魔女?」
魔女が何かを仕掛けているのでないだろうか。サクラはそう考えた。
「でもなんで? 危険だから? その場所に行かせないようにする為?」
そう考えるとしっくりくる。だが。
「魔女が誰かの為に動く?」
それは不自然というかありえなそうな気がした。
「でもそれしか……」
それ以外に考えられなかった。しかし、その仮定が本当だとすると厄介な事態へと陥ることになる。




