#1 少年、王都に向かう。
夢の中。
自分ではない誰かが死ぬ。その直前までの映像を見ている。
その死ぬ直前の部分で目を覚ます。
「またこの夢か。」
そう呟き、伸びと軽い欠伸をする少年は前世の記憶。即ち、鈴城碧斗の死ぬ直前までの記憶を持つソラ=プレスティージオ。
青色の髪に淡い水色の目のまだ少し幼さが残る少年だ。
窓を開け5月の心地よい風で目を覚まし、自室から台所に向かう。
「おはよぉー」
「遅い!今日何の日だか忘れたの!?」
そう言いながら手早く朝食を並べるのは、きれいな茶髪を肩ぐらいまで伸ばし深い青色の瞳を持つ母のリルナ=プレスティージオ。
今日は、ソラの〈スキル開花の儀式〉の日だ。この儀式はその人が12の年齢になる月に、誰もが行う儀式だ。
「おう。起きたか」
黒髪に綺麗な茶色の目を持つ父のブルス=プレスティージオが、並べられた朝食を食べながらいう。
「遅いってまだまだ時間あるじゃん。またあの夢で起きちゃうしさぁ」
ソラも席に着き、朝食に手を伸ばしながらいう。
「夢ってソラの前世の人っていう記憶の夢か?そんなの見るなんて儀式に影響でないといいなぁ」
朝食を食べ終えた父が冗談交じりに言う。
母も「そんなバカみたいな話あるわけないでしょ!ほらさっさと食べなさい!」
と、どちらも信じてくれてる様子はない。
「はーい」
と言い、パンとスープを食べて朝食を終わらせる。
「じゃ。行ってくる。」
「行ってきまーす」
「気を付けてね。最近王都に向かう途中も魔物がうろつくみたいだから」
そんなこんなで身支度を整え、王都に向かおうとするソラとブルス。それを心配そうに見送るリルナ。王都〈レムルド〉は馬車で5時間はかかる距離にあり、道中は整備され比較的安全だと言われていたが、最近魔物が出ているという噂もある。
そんな心配そうな母に振り返り。
「俺がいるから大丈夫だ!」
と、言う父は元冒険者だ。なぜ冒険者を辞めたのか理由は詳しく聞かされてないが、以前は相当な冒険者だったらしい。ソラ自身、剣術の修行でコテンパンにしてくる父が護衛なら安心だと思っている。
そんな言葉を交わし、村の出入り口に用意してある馬車に向かう途中、ソラと同い年位の女の子が、走りながらこちらに向かってくる
「ソラー!」
「ハル!」
ハル=ローズパール。桜色の髪を肩ぐらいまで伸ばし琥珀色の瞳を持つその子は、ソラと同い年の幼馴染だ。既にハルは先月、開化の儀式を終え、スキル〈春桜〉を開花させている。
「ハァ、ハァ。良かった、間に合った!あの、ソラ。これ!」
ハルが、ソラに差し出したのは小さな布の袋だった。
「これ、なに?」
「えっと。お守り!ソラが無事に戻ってこれるように四葉のクローバーと小さいハートの形になってた石をその袋に入れたの」
少し頬を赤らめながら、ハルは答える。
「そっか。ありがと!じゃあ、またな!お前のスキルより絶対強いスキル開花させて戻ってくるから!」
ソラはその袋を受け取り小走りで馬車のところで待つ父の元へと向かう。
「気を付けてね!」
「おう!」
父の元に着くなり父が
「お前も隅に置けないなぁ」
と馬車に乗り込みつつ、にやけ顔でいう。
「なんで?」
「ま、もう少ししたらわかると思うぞ。じゃあ、じいさん頼む!」
「はいよ。ほら、出発だ!」
こうして父の言葉に少し疑問を感じながらも馬車に乗り込んだソラとそんなソラを微笑ましそうに見ながら頭をなでるブルスは王都に向かうのだった。