Lolita《005》
「おおぉ、ここが始まりの草原か...。」
「ふぉぉ...風が気持ちいい。」
二人の目の前に広がるのは草原。奥の方には森林が広がっているがそれはずっと遠く、まるでどこまでも、どこまでも草原が続いているかのように見えた。
「ほんとに...ここはゲームじゃないと感じるね。」
「そうだね...風が気持ちいいし、それに動物達があんなに生き生きとしてる。あっ...。」
そうしゃべる二人の目の前をプルプルとした青い球体が通り過ぎていった。その後を何人かの人、プレイヤーが追って行った。その駆ける足音、踏まれた草のへこみ具合。全てがリアルで...ここが異世界だと言っても過言ではないなと二人で思った。
そして今いるこの場所は先程の街の南の門から出てすぐに見える草原で、後ろにはそびえ立つように建てられた門がある。
「それじゃ、行こうか。メイ。」
「うん!行こう!」
二人で門をもう一度振り返った後、顔を見合わせてニカッと笑い合い、その場から草原に向かって駆け出した。その足から伝わる感触、顔を撫でる風の感触を楽しみながら。
ーーーーーーー◇
「メイ、止まれ。あそこにスライムがいる。」
「あ、ほんとだ。あとあれスライムで合ってたんだね。すごいプルプルしてる。あと他に何がいるの?」
「・・・掲示板の情報だと他には背中に角の生えたバックホーンラビット、甲殻が岩でできたロックダンゴロ、それと見た目そのまんまが蝙蝠なバットがいるそうだ。ちなみにバットは昼だと動きが遅い。」
そう言っている間に件のスライムはこちらに気がつき、その口のない見た目を裏腹にピキュッと声を出しこちらに向かってきた。
「やっぱりこう見通しがいいとバレるか。メイ、ひとまずは俺がやる。手出しはするなよ!」
「うん分かった。それと...お兄の口調の変わりようは変わらずだね。」
「ふん、言っとけ。【召喚《虫》】」
そうお兄が呟くと目の前から青い光とともに蜘蛛が一匹現れ、スライムに向かってその足を振り上げ威嚇をし始めた。ちなみにお兄の口調が変わるのは本人曰く緊張からのようで、この方が喋りやすいとのことだ。
「おおー、蜘蛛さんだ。でもなんで?」
「やはり群れる数が多そうなのは虫だからな。それに蜘蛛なら毒とか糸とかで序盤は重宝しそうだろ?」
「ふーん、なんか現実の蜘蛛より大きいし...確かに頼りになりそうだね。あ、糸はいた。・・・何で頭から?」
そう不思議に思うのも無理はなかった。現実ではお尻から出すのが一般的であるし。
そう考えるうちにも吐いた糸は目の前にいたスライムを地面に張り付けさせ、身動きを取れないようにした。
おぉ、蜘蛛の糸つおい!
「まぁ、そこはゲームだからな。だが多分、敵に後ろ向けてたんじゃ隙がありすぎるから頭で吐けるようにしたんじゃないか?」
「そう言われると、そうだね。でも...ターザン出来ないね。」
「・・・なるようになるだろ、多分。」
その合間にも蜘蛛は糸で地面に貼り付けられて動けないスライムに近づきその足を振り下ろした。だが何度踏みつけてもスライムに効いた様子がなく、プルプルと煽るようにその場で震えていた。その様子に蜘蛛はイラついたようで先ほどよりも足を強く振り下ろしたが、無駄に終わったようだ。
「ディック!そいつの赤い部分を攻撃するんだ!」
蜘蛛...ディックはお兄の声を聞いてその足をスライムの中に浮かんだ赤い球体に向けると心無しかスライムの動きが止まり、先ほどよりも小刻みに震えだした。
その様子にディックはニタリと笑うかのように足を更に高くあげると勢いよく赤い球体に向かって振り下ろした。するとスライムの姿が灰のように散り散りになり、サーっと空気に溶けるように消えていった。
「よし!お見事だディック。その落ちてるものを拾ってきてもらえるか?」
その場で誇らしそうに胸を張るディックはその声にお兄の方を向いてコクっと頷くとスライムがいた場所に落ちていた袋を掴み、お兄の足元に戻ってきた。その目からはお兄に褒めて褒めてと願っているようでありその足をお兄の脚に絡めていた。
「よしよし、偉いぞディック!ほれ、果物でも食べな。」
「キシャ♪」
お兄は屈んでその頭を撫でるとどこから出したのかいつの間にか手に持っておた赤い果物を渡した。ディックは空を受け取るとご機嫌そうにむしゃむしゃとかじりついた。
「お兄、ディックってこの蜘蛛の名前?」
「うん、そうだよ。・・・そうだ、メイ、とても触り心地がいいから撫でてみたら?」
「・・・噛まない?」
「うん、噛まない。」
そう言われたので恐る恐ると顔の方に手を近づけるとそのディックと目が合った。するとキシャと言う鳴き声とともにこちらに撫でやすいように位置を変えてきてくれた。
そのおかげが先程まで抱いていた恐怖心が幾らばかりかなくなり、優しく頭を撫でた。その手触りは少しばかりもふもふしており意外と毛が生えていることがわかった。
ーー確かに手触りがいいね...
「ふふ、気持ちよさそうだね、メイ。そういえばメイも召喚ができたよね?してみたら?」
「あ、そうだった!」
そう言われてすぐさま唱えようと思ったがその前に能力詳細を確認することにした。これから一緒に冒険する仲間だし知っておかなきゃなと思ったから。
▽火炎放竜(未定)召喚Lv.1
自分の相棒となる竜を召喚するスキル。召喚された竜は火炎放射器と変化する能力を持つ。
その成長は使用者によって決まり、強くなるも弱くなるも使用者次第である。
またこの召喚に魔力は媒介として使われず、使用者と召喚されたものの絆の深さによって召喚されるかが決まる。
《基竜選択》
〇ノーマル 〇ミックス 〇ハード
▽機関獣(未定)召喚
自分の相棒となる獣を召喚するスキル。召喚された獣は機関銃に変化する能力を持つ。
その成長は使用者によって決まり、強くなるも弱くなるも使用者次第である。
またこの召喚に魔力は媒介として使われず、使用者と召喚されたものの絆の深さによって召喚されるかが決まる。
《基獣選択》
〇犬.........
ふむふむ...召喚に魔力を使わないってのは良さそうだね。でもまずは、ベースか。
「お兄ー、このベースってどういうこと?」
「ん?そりゃ召喚される仲間の基礎となる...」
「あ、そゆことじゃなくてね。これなんだけど...」
そう言って先ほどと同じように設定でお兄にその詳細を見せた。そしてそれを見た途端うむむと顎を手で抑えて唸り始めた。
「取り敢えずこの機関獣召喚は俺の召喚と似た感じだけど...ハード、ミックス。うーん、ちょっと待っててね。」
そしてお兄はステータスを開くと真剣そうに何かを見始めた。その様子はとても集中しているようで話しかけずらい雰囲気だった。
その合間は暇なのでディックを撫でながらそこら辺の石を拾う事にした。ちなみにこのゲームでは素材とならないものは無いらしい。この手に持つ石は立派な素材だし、空気も、あまつさえはあの雲ですら素材となるらしい。
〈土付きの石×30取得しました〉
〈花付きの草冠: を取得しました〉
石を拾い、土付きと名前がついているその細さに驚きながらもそばに生えていた草と花を編んで草冠を作りディックの頭にふさっと被せた。少し紫っぽい外見に緑というのは何とも不格好だが気に入ってくれたようでグリグリとこちらに顔を押し付けてきた。
「ディック、良かったね作ってもらえて。それじゃ暫く索敵を頼むね?できる限り音を立てずにね。」
「キシャッ!!」
そのお願いにディックは張り切って駆け出して行った。
「すごく喜んでるねディック。メイもありがとね。」
「ぜんぜん良いよ!ディック可愛いからね!」
「ははは、一応ディックはオスなんだけどね。それじゃさっきのスキルのことで分かったことがあるから直結に言うね?ずはり...ハードにしなさい!」
「お兄ならそう言うと思った。だってハードって難しいって意味でしょ?ならその方が、燃えるじゃん!」
「俺もそう言うと思ったよ。それじゃ早速選んでみて。」
「了解!」
そして火炎放竜召喚の詳細欄の《基竜選択》からハードを選択すると本当にいいですか?という吹き出しが表示された。
だけど既に決めたことだし、悩むことなくイエスの部分を押し選択した。それと機関獣の方も悩んだが力強くてかっこよさそうな熊にした。
「それじゃ行くよ、【機関獣召喚】、【火炎放竜召喚】!」
そう唱えると先ほどのお兄と同じように目の前に二つ青い円があらわれた。ワクワクとその光景を眺めていると徐々に円から粒子のようなものが集まり、その姿を現した。
「・・・お兄、ハードって言ったけど、ここまでは予想できなかった。」
「・・・俺もだよ。」
そう愕然とする目の前には毛繕いをする子グマと、そのそばに鎮座するように炎のように赤色をした卵のようなフォルムのした卵。いわゆる卵が現れた。
「・・・頑張ろう。」
その私の言葉にお兄は私の肩に手を置きニコッと微笑むと勢いよくこちらにサムズアップしてきた。
・・・少しイラッとしてしまったのはしょうがないと思うよ。ね...?
???「なんでクマなの?」
???「・・・作者によりますと、最近熊が出てくる小説ばっかり読んでいたからだそうです。」
???「・・・そう。そんな読んでいる暇あったら続き書きなさいよ!!!」
。゜(´∩ω∩`)゜。スイマセヌ
(`・ω・´)カキダメガヒトツデキルタビニコウシンスルネ!
???「見にくい方もいるかもしれませんが、作者の言いました通り、書きだめが一つできる度に更新をするそうです。」