Lolita《003》
「能力?」
「ええ。まぁ別の言葉でいえばスキルってこと。」
「スキルっ!!」
その言葉を聞いてメイは目を輝かせ、早く早くというように女性の裾をくいくいと引っ張った。
「そんな慌てないの。それじゃぁ決めるわけだけど...あなたはどちらがいい?自分で選ぶか、決めてもらうか。」
「どゆこと?」
そのざっくりとした説明だけでは理解できなかったようで首をこてんと傾げて聞き返した。
「説明が足りなかっわね。ごめんなさい。それで自分で決めてもらうっていうのはその言葉通り自分でスキルを選んで構成すること。まぁ自分の計画通りに決めたいのならこちらが無難。それで決めてもらうっていうのは...」
「お姉さんが決めてくれるの!?」
だいぶ懐いたのか女性に決めて貰えると思ってワクワクするメイ。だがそれは違ったようでその顔は苦笑いであった。
「ごめんね、決めるのは私じゃなくて私の上司...ボスって言った方がわかりやすいかしら。まぁその方が決めてくれるのよ。だけどさっきあなたがいたプレイスタイルに合ったスキルを的確に選んでくれるの。もしかしたら新たにスキルを創造してくれるかもしれないというおまけ付きでね。」
「ほぇーー。」
その言葉になんだか凄そうと感じたメイはすぐさまその方法の方がいいと思ったが、前に即断直結は身の危険を招くとも聞いたので深く考えてみたが、お姉さんのボスなら大丈夫そうというなんとも不安が残る理由で決めてしまった。
「そう、それでいいのね。·····はい、できたわ。それじゃあそこにたってね。」
そう言いメイの脇に手を入れ持ち上げるといつの間にか現れたのか光り輝く円の中心へとメイを下ろした。すると下から光が迫りメイの身体を包み込んだと思うとそのメイの身体に異変が現れた。
そしてその光が晴れるとそこには先程とは打って変わった印象を醸し出すメイが立っていた。その肌はすこし褐色が混ざり、活発そうな様子が見て取れる。だが、その特徴以外に一番変わっているところがあった。
「おおー、なんか棘がいっぱい生えてる。」
そう少女の肩や肘からは岩でできた棘が生え、さらにはおでこからも角のように二本の棘が生えていた。その姿はまるで鬼のようで、他の人が見たらそう思ってしまうだろうことが予想できた。
「あなたの姿をゴツゴツさせるのは似合わないと思ったから少しいじらせてもらったわよ。その棘はある意味老廃物と思ってもらっていいわ。身体の中に入り切らなかった分を外に出したの。どう?気に入った?」
「うん!とっても!」
「そう、良かった。」
何せ先程ごつくなりたくないと思ったばかりなのだ。この結果はメイにとって喜びはすれども怒りはしない。
「それじゃ今からあちらの世界に送るわね。」
「お姉さんは来ないのー?」
そう言うメイの気持ちは単純であった。何せ普段嫌に思われる言葉を言っても受け入れられ、あまつさえ褒められたのだ。そう聞いてもしょうがない。だがその問は予想通りだったようで首を横に振った。
「うん、分かった。」
その答えにメイは落ち込むも、直ぐに気を取り直し笑顔で返事をした。
「それじゃぁ、またね?」
「ええ、また会う機会があったらね。それとあっちに着いたらステータスって言ってね。それでは、楽しんで。」
次第にその視界が光に包まれ、直ぐにこちらに手を振る女性の姿が見えなくなってしまった。
そしてふと聞こえてきた喧騒に目を開けると目の前には石造りの街並みが広がっていた。地面に風呂敷を広げ物を売り、それを値切る者の声。またそこらのベンチに座り仲良く喋りながら食べる者達...そんな声が辺りに響き渡り、元の世界ではあまり見ない光景にとても感動を覚えた。
「ふおおぉぉぉぉ!」
声を出してしまうぐらいに。その声に周りに居た人、新しく隣に現れた人達がこちらを向き、メイはその視線に耐えきれず顔を俯かせながらその場を小走りに去っていった。
正しくいえばわその視線はメイの肩と額に生えた棘に向いていたのだが。だがメイは知ることもなく、そのまま路地裏へと入っていった。
「はぁ...もうちょっと気をつけよう。私だって怖いよ...あんなの。」
そう自分の胸に誓いながらも真っ直ぐ進み、ちょうどいい柱と柱の間に座り込んだ。そして先程お姉さん...
「あ、名前聞くの忘れてた...。でも、次会えるって言ってたしその時聞こう!うん!···取り敢えず、今はお姉さんでいいかな。」
気を取り直してお姉さんに言われたとおりにステータスと呟くと目の前にヴンと音を立てて四角い吹き出しのようなものが現れた。それは宙に浮いており、それでも実態があるようで指で触れることができた。だがすり抜けようと意識しながら触れるとなんの抵抗もなく腕がその吹き出しをすり抜けた。不思議だなーと思いつつも腕を戻し吹き出しに書かれている内容を読み始めた。
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「明日来 芽依誘」name:〈未記入〉
〈種族〉ゴーレム族(改良)
〈種族位階〉Rank.1(00/05)
〈運命位階〉Destiny.001
〈Str〉13
〈Vit〉20
〈Dex〉5
〈Int〉5
〈Agi〉3
〈保有スキル〉
頑強Lv.1 根岩Lv.1 機関獣(未定)召喚Lv.1
火炎放竜(未定)召喚Lv.1
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「ふぉぉ...?!これってりゅ、竜!?それに獣って?」
人目見た瞬間その文字に意識が全て持っていかれた。だけどそれは仕方が無いじゃん。何せ竜、あの竜なんだから。それと補足しておくが髭の生えたひょろ長は竜ではなく龍と書き、その点竜は身体が太く、翼が大きいという特徴を持つ。
「竜...竜かぁ。でも、火炎放竜って...それに機関獣。もしかして!」
そこまで思い脳裏に浮かんだのがあのおじさんが叫ぶ光景。『汚物は殲滅だァァーー!』と叫びながらその逞しい腕で扱われる二つの武器。それは機関銃と火炎放射器。もしやそれでは、と思いそのスキルを使ってみたいと念じてみたが目の前に、この場ではこのスキルを扱うことはできません、という吹き出しが現れお目当てのものが出る気配はなかった。
「うーん、今はダメなのか...残念。まぁ後で試してみようかな。ひとまずは、お兄を迎えに行こう!でも、さっきの所だよね...うーん、うーん。」
そう言って少しの抵抗を感じながらもメイは先程の場所まで歩いて戻って行った。無事に着きあたりを見回したがお兄の姿は見えず、仕方なく近くのベンチに座って待つことにした。その合間も続々と人が青い光とともに現れ、それを眺めながら頬杖をついて待っていた。
·····メ·····
遠くから何かが聞こえる。それは私の心の奥深くまで入り込み揺さぶるように響き渡る。
·····メイ·····
その声はまるで...
「メイー起きろー。」
「·····うにゅ?お兄?」
目を開けると目の前にお兄の顔があり、バッチリと目が合った。そして身体を起こして周りを見ると先程まであった喧騒はなりやみ、今は多くの人が店じまいをしている所だった。
「そうだよー、お前のお兄だよー。まったく、こんな所で寝てるなんて...不用心にも程があるぞ?」
「う...ごめんなさい。」
だってお兄が遅いから...と言おうとしたがすぐにその言葉は引っ込んだ。なぜならその目は本気のようで、自分のことを心配する気持ちがありありと溢れ出ていた。
「はぁ...次から気をつけること!それじゃこんな時間になっちゃったけど歩き回ろっか。」
「うん!」
そう言ってメイは兄と手を繋ぐと嬉しそうに夕焼け色に染まった街中を歩いていった。
???「あの子のお兄さんも良かったわね...ねぇ、もっと私が担当する子は来ないのかしら?」
???「・・・筋肉ゴリゴリ野郎でも送りましょ・・・もういませんか。
さて、読者の皆様。次の更新も不定期でございます。
作者よりーー書きだめが異常に少ないから、とのことです。」
???「作者がサボってるだけじゃない。ってまってそれを向けないで!お願いだから!」