義務と擬務
3話です。少し短めですがお読みください
現場につくとそこには現場を調べている警察と沢山の車と人がいた。
見に来ている人は様々でスマホで写真をとる人、無理矢理規制線の先に入ろうとする人。どっかの報道局だろうか、カメラをもって手に腕章を着けてる人。色んな大人が詰めかけていた。
「けっこう人いるな…これじゃなんも調べられないね。どうする?帰るか?」
タイチはつま先立ちをしてそういう。
「だけどさここで俺たちが帰っちゃったとしてあの子が無罪だったらどうすんの?」
湧き出し始めた正義感を盾にタイチに嫌な問いかけをする。少し
「そんなこと言ってもこれじゃな…」
二人してどうしようもなく後ろで眺めていると急に人だかりがざわつき始める。
聞こえてくる声に耳をすませてみるに家の中からお母さんが警察と一緒に出てきたようだ。
「どいてください。車が出ますので!どいてください」
小太りの警察官が規制線を外し、マスコミや野次馬に道を開け退くように促す。
プップーとクラクションをならしながらパトカーが出てくる。
周りをカメラマンが囲み「娘さんはどんな子だったんですか」「昨日はいつもと違った様子でしたか?」と絶対に答えるハズもないのに聞いている。
「アスマ、今がチャンスじゃないか」
「どういうこと?」
「お母さんのこと見てみろよ。あの子が犯人じゃないとしたら犯人かもしれないのはお母さんだろ」
タイチはパトカーの後部座席を指差しながらそう言う
「あ…、そうだな」
つい場に飲まれてしまっていたようだ。慌ててポケットの中の眼鏡ケースから眼鏡だす。
「101…」
「40代だとしたら低いな…」
見ていると数字に変化があった
「あれ。100…?減った」
「減るのかよ。何でだ?」
パトカーは人混みを振りきるとスピードをだし現場を後にする。
「減るのは始めてみたけど、あのお母さんになんかあるのは間違いないね」
「だけどさ…今すぐにはなにもできないよね…俺らただの学生だし。眼鏡のことも不確定なこと多くて取り合って貰えないだろうし」
下を向いて暗い声のタイチの言葉ハッとする。どうにかして真相を調べようと躍起になっていたが少し変な道具を手に入れただけで自分達はただの学生なのだ。
「だよな。せめてあの子かお母さんあたりに直接聞ければな…」
なにもできない自分の不甲斐なさに押し潰されそうになる。
次の行動をする気が起きなくなにもしないまま二時間ぐらいたった。
「…とりあえず。帰るか」
湧き出した正義感は枯れてしまう。枯れるしかない。
「うん…」
絶対に隠された事実がある。そう確証を得た。しかしそれがなんなのか。合ったとしてもそれを知るすべも知恵もない。仮に知ったとして、それを誰かに取り合って貰えるはずもない。
つまり意味がないのだ。真実を知っても。
某少年名探偵のように現場に行くのも困難だしそこまでの推理力もない。
帰りの電車で現実を叩きつけられてしまった僕らは一言も話さなかった。
数日後テレビで例の女の子に5年の懲役が言い渡されたことを知って以来、なぜだか目が急に見えなくなることもなくなり眼鏡をかけることもなくなった。
次で完結です多分。